自由党の連立離脱後を受け、暫定内閣が発足
(オーストリア)
ウィーン発
2019年05月24日
オーストリアでは、極右の自由党のハンス=クリスティアン・シュトラッヘ党首(副首相兼スポーツ・行政相)のスキャンダルによる辞任と、その後の同党の連立離脱を受けて、セバスティアン・クルツ首相は暫定内閣を組閣し、アレクサンダー・ファン=デア=ベレン大統領が5月22日昼に宣誓就任式を行った。ハルトウィグ・レガー財務相は副首相を、ユリアーネ・ボグナー=シュトラウス家族・女性・青年相がスポーツ・行政相を兼任し、社会福祉・労働・健康相、インフラ・技術相、国防相、内務相はそれぞれ、専門家が担うことになった(表参照)。なお、自由党に指名された無所属のカリン・クナイスル外相は辞任しない。
宣誓就任の直後に、新内閣の初閣議が行われた。閣議の前にクルツ首相は、内閣の主な目的は改革を実施することではなく、国の安定を維持することだと強調した。野党は、暫定内閣に対する不満を表明した。社会民主党のトーマス・ドロヅダ書記長は、新閣僚メンバーは専門家というより国民党寄りで、内閣は国民党の単独政権に等しいと批判した。
国民党は議会で過半数を握らない上、左派の「ピルツのリスト」をはじめとする野党は既に、5月27日に予定されている特別議会で首相に対する不信任案を提出する意思を表明した。最大野党の社会民主党はまだ同案に関しての意見を公表していないが、連立政権から離脱した自由党も賛成した場合、不信任案が可決され、クルツ首相が辞任に追い込まれる可能性が高い。その際には、大統領は専門家からなる暫定内閣を新たに指名する権限がある。暫定内閣が、前倒し総選挙まで存続するかどうかは不透明な状況だ。
ただ、前倒し総選挙の日程はまだ決まっていない。憲法に基づく手続き上、最速で8月半ばごろに実施することは可能だが、その場合、選挙戦が夏休みシーズンに当たるため、9月半ばごろに実施の可能性が高いとみられる。
(エッカート・デアシュミット)
(オーストリア)
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