デジタル貿易政策は自由化を推進
(メキシコ)
メキシコ発
2019年05月30日
メキシコは電子商取引(EC)をはじめ、デジタル貿易に対して基本的に自由化促進の方針を取っている。2018年12月30日に発効した「環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)」では、ECについて他の協定よりも詳細に取り決めがなされており、「21世紀型協定」とも表現される。また、2018年11月30日に署名された米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)には、第19章にCPTPPを参考にしたと思われるECに関する規定が盛り込まれた(表参照)。米国はTPPから離脱したものの、USMCAとTPP11の双方の協定に加盟するメキシコからすると、アマゾンやグーグルなどの世界的に競争力のあるデジタル企業を擁する米国の意向に追随したかたちだ。
メキシコでの規制の整備も少しずつ進んでいる。メキシコ経済省は2018年9月27日、EC事業者に対する任意規格(Normas Mexicanas)を発表した。消費者の保護が目的で、ECにおいて商品を販売する個人、法人、また、このようなプラットフォームを提供する事業者が対象となる。内容は、消費者が商品を購入する際に消費者自身が購入する意思のあるものかどうかを確認できる仕組みについての規定や、使用者および消費者の個人21 トランプ保護の保障の仕組み、支払いと商品の受け渡しの仕組みなど、多岐にわたる。現時点では任意規格であるものの、将来的に強制規格(Norma Oficial Mexicana、通称NOM)となる可能性もある。
このような制度整備に対し、厳しすぎる規制は特に中小企業事業者の参入の障壁を高くする、という指摘もある。メキシコインターネット協会のエンリケ・クレブロ氏は「規格に規定されている機密性の保持や個人情報保護の項目は、個人情報保護法よりも厳しい。中小企業にとっては多くの投資が必要になり、この産業への参入が難しくなる」と指摘した。また、ECプラットフォームを提供する大企業も、「21 トランプでは、マーケットプレースは消費者と売り手をつなぐだけの役割と認識されているが、この規格では、それを明確に読み取れなかった。商品に瑕疵(かし)があった場合、店舗に行って返品するような従来のモデルと同様のように感じた」とし、プラットフォームを運営する大企業にも影響が出る可能性を示唆した(「エル・エコノミスタ」紙2018年9月27日)。
(岩田理)
(メキシコ)
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