本格稼働から1年、シドニー・スタートアップハブが活況
(オーストラリア)
シドニー発
2019年03月01日
オーストラリアでは、2015年12月にターンブル首相(当時)が「全国イノベーション・科学アジェンダ」を発表し、各州がイノベーションや起業の推進に取り組んでいる。中でも、ニュー・サウスウェールズ(NSW)州政府は、雇用創出のためスタートアップ企業・中小企業の支援が重要と考え、他州に勝るビジネス環境を整えようとしている。オーストラリア最大の都市で、NSW州都であるシドニーを同国のイノベーション地区にすべく、州政府は2017年2月にスタートアップハブをシドニーに設立すると発表し、2018年2月に本格的に稼働した。それから1年、スタートアップハブは活況を呈している。
2月14日、州政府機関Job for NSWが主導するシドニー・スタートアップハブのダイレクターであるジョシュア・フラネリー氏に話を聞いた。
雇用創出が重要
スタートアップハブ創設の主目的は雇用創出だ。現在、雇用の7%を占める先端技術系の中小企業の就労人口は、将来さらに大きく伸びると予想されている。
この施設では、本格的な稼働から1年で4万人の利用があった。現在480社、1,500人が入居している。市内中心部のウィンヤード駅ビルの1階から11階までのスペースには、スタートアップ企業向けのコワーキング・スペース(2,500席)、地方企業向けのランディング・パッド、セミナー会場のほか、マイクロソフトやカルテックス、オプタスなどの大企業がアクセレレーターとして入居している。近日中に金融大手もアクセレレーターとして入居する。この施設は、南半球で最大のスタートアップ向け複合施設だ。
4つの活動基盤
重点的な活動基盤は、(1)タレント:適切な人材と育成、(2)メンタリング:知識の交流、(3)ファンディング:ローンや助成金の供給、(4)コネクティビティー:エコシステムや関連業界との連結、の4点だ。
次のステップは、単にコワーキング・スペースの提供だけでなく、シドニー・スタートアップハブ独自のプログラムを開発し、ブランドのないスタートアップ企業のセールス・売り込みをすること。さらに、広域的なエコシステムを対象とし、シドニー圏、シドニー西部へのプログラム展開やプラットホーム提供も考えている。
(中里浩之)
(オーストラリア)
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