順調に進むマタバリ開発事業
(バングラデシュ)
ダッカ発
2019年02月13日
総額約5,000億円におよぶ日本の大型円借款案件であるバングラデシュ南西部のマタバリ超々臨界圧石炭火力発電所と深海港の開発が順調に進んでいる。ジェトロが1月29日にヒアリングした案件共同受注者である住友商事によると、2024年中には発電所1号機・2号機が完成予定だ。現在は港の浚渫(しゅんせつ)と、そこから出た土砂を利用した発電所建設予定地の盛り土作業を行っている。沿岸部に位置しているため、高潮とバングラデシュを毎年のように襲うサイクロン対策として10メートルもの盛り土が必要だという。
バングラデシュの港湾は、第2の都市チョットグラム(旧名チッタゴン、注)港が海上貨物の9割を扱っているが、水深が最大9.5メートル程度と浅く、コンテナ船は全てシンガポールなどで積み替えて入港せざるを得ない。加えて、港のコンテナ収容量が少なく、ソフト面の整備も遅れているため常に混雑しており、バングラデシュのビジネス阻害の要因の1つに挙げられている。整備中のマタバリ港は水深18.5メートルで、大型船の着岸も可能となる予定で、完成すればバングラデシュ政府の長年の悲願である深海港の開発がかなうことになる。
地元での雇用を創出
電力については、現在のところ、国全体で18ギガワット(GW)の発電容量に対して、実際の発電量は約12GWといわれている。バングラデシュは毎年7%を超えるスピードで経済成長を続けており、電力需要の拡大が見込まれ、政府は2020年までに23GWへ発電容量を拡大する目標を掲げる。マタバリ発電所は、1号機と2号機で各600メガワット(MW)の計1,200MWの発電量となる。バングラデシュでは、これまで自国の天然ガスを使って発電していたものの、近年急速に枯渇し、2018年から液化天然ガス(LNG)を輸入せざるを得ない状況になった。こうした中、超々臨界圧石炭火力発電は、安価な石炭を燃焼させて作る蒸気を、通常の火力発電所よりも高温かつ高圧にして発電することが可能で、二酸化炭素の排出量も削減できる。日本企業は過去20年近く、国内外において超々臨界圧石炭火力発電所の整備実績を持っており、バングラデシュ政府の期待も大きい。さらに、このプロジェクトでは、隣接する海水で蒸気を冷却してボイラーに戻し、循環させる点でも環境に配慮している。
住友商事によると、「建設現場では数千人が働いており、マタバリの村も商店が増えるなど、開発前より明らかに裕福になっている」という。マタバリ開発は地域の雇用創出、経済発展にも一役買っているようだ。
(注)バングラデシュ政府は2018年10月、チッタゴンの名称を本来のベンガル語表記であるチョットグラムに変更した。
(新居大介)
(バングラデシュ)
ビジネス短信 8480fc53ed9e9f11