中南米進出日系企業調査、チリでは人件費のコントロールがカギ
(チリ)
米州課
2019年02月14日
ジェトロが2月7日に発表した「2018年度中南米進出日系企業実態調査」において、チリでは78社にアンケートを送付し、41社から回答を得た(調査期間2018年11月1~30日)。銅価格が一時的な回復に向かっている時期での調査だったが、2019年の営業利益見込み(前年比)については、「悪化」と回答した割合が調査対象国で唯一、0%となった。一見順調なようだが、2019年の営業利益見込み改善の理由をみると、「人件費の削減」「その他支出(管理費、光熱費、燃料費など)の削減」「調達コストの削減」の回答割合が比較的高い(図1参照)。
具体的に現地従業員数の変化をみると、2018年に現地従業員が「減少」したとする割合が22.0%で、ベネズエラ、アルゼンチンに次いで高い。前年調査では、今後の予定として減少させるとの回答が10.8%しかなかったが、実際には2018年にかなり人件費を絞り込んだことが分かる。
他の国では2019年の営業利益改善の理由として「現地市場での売り上げ増加」を挙げた割合が高いが、チリ進出日系企業は56.3%と、経済が混乱状態にあるベネズエラを除き、最も低い結果となっている。つまり、チリ進出日系企業は、コストカットによって2019年は2018年比で業績を「改善」させようとしている様子がくみ取れる。ちなみに、チリの投資環境面におけるメリットとリスクに関する設問において、リスクのトップにあるのが「人件費の高騰」だ。
チリからの輸出でCPTPPの活用
本調査時点で環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)は未発効だったが、CPTPPの活用に関して「利用を検討中」ないし「既存の協定との併用を検討」との回答割合が、特に「チリからの輸出」において、他国より高い(図2参照)。
チリからの輸出において、CPTPP活用を検討している企業は、取り扱い品目がチリで原料を調達するものであること、そしてその品目の性格上、現行自由貿易協定(FTA)/経済連携協定(EPA)活用の問題点として、チリからの輸出の際の原産地証明に関して不満を持っている、という共通点がある。つまり、CPTPPの活用を検討している進出日系企業は、現在活用しているFTA/EPAに関し、(1)手続きに時間を要する、(2)手続きが煩雑、(3)基準を満たすのが困難、(4)既存FTA/EPAなどの原産地規則がそれぞれ異なり煩雑、などの項目に回答している傾向にある。
チリは既に、CPTPPの全ての加盟国とFTA/EPAを発効させているほか、MFN税率(WTO協定税率)が一律6%(一部例外を除く)と低率なため、CPTPPを通じた関税削減効果は薄い、と分析する向きもある。しかし、上記のような原産地証明書関連の手続きや、規則面でのメリットに着目している進出日系企業もあるということには留意しておきたい。
(竹下幸治郎)
(チリ)
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