一般最低賃金を1月から16.2%引き上げ、米国境地帯は2倍に
(メキシコ)
メキシコ発
2019年01月09日
メキシコ政府と組織労働者、民間企業の代表で構成される国家最低賃金委員会(CONASAMI)は2018年12月20日、一般最低賃金の改定を発表し、同26日に官報公示、2019年1月1日から施行した。CONASAMIの発表によると、算出方法は前年までと同様に、2017年12月1日から適用されていた最低賃金の88.36ペソ(約494.8円、1ペソ=約5.6円)に、最低賃金労働者の購買力回復を目的とした定額9.43ペソ分のベースアップが実施され、それに5%のインフレ考慮分を上乗せした金額としている。その結果、日給は合計で大きく引き上げられて102.68ペソとなり、前年比16.21%増えた。また、アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)大統領の主要政策である、米国への移民流出を抑制する目的の北部国境地帯開発プロジェクトを考慮し、該当地域(表参照)の最低賃金はこれまでの日給88.36ペソから2倍となる176.72ペソとなった。
ルイサ・マリア・アルカルデ労働・社会保障相は「最低賃金額の引き上げは、これまで最低賃金で生活をしてきた労働者への清算の意味であり、民間消費の拡大や国内市場を活性化させることにもなり得る」とコメントした(「エル・フィナンシエロ」紙2018年12月18日)。また、グラシエラ・マルケス・コリン経済相は、北部国境地帯の最低賃金倍増がインフレを引き起こすことはないとの認識を示している。
日本の経団連に相当する企業家調整評議会(CCE)のフアン・パブロ・カスタニョン会長は、メキシコ経済の発展のため、最低賃金の引き上げを祝福しつつも、恣意(しい)的な引き上げにくぎを刺している。「われわれは、人工的な給与の引き上げがないように、リアリストである必要があり、また責務を果たすために、日々責任を持って企業活動を行っている」と語った(「エル・エコノミスタ」紙2018年12月18日)。
また、最低賃金の上昇率が通常の賃金交渉の目安とされることを踏まえ、労働組合が賃金交渉の場で最低賃金同様の16%を超える引き上げを求めるのは雇用に悪影響を及ぼす可能性があり、6%を超える賃上げ要求は避けるべき、と指摘するエコノミストもいる(「エル・エコノミスタ」紙2018年12月28日)。
(岩田理)
(メキシコ)
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