未就学・未就労の若者に対する奨励金支給プログラムの指針を発表
(メキシコ)
メキシコ発
2019年01月18日
メキシコ労働社会福祉省(STPS)は1月10日、未就学・未就労の若者の就労を支援する「未来を建設する若者」プログラムの指針を官報公示した。同プログラムは、アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール政権の重点社会政策の1つで、若年層に占める未就学・未就労の人口(いわゆる「ニート」)の比率が22%と、OECDの平均15%に比べて高いメキシコの社会事情に配慮した政策だ。また、貧困層の若者が麻薬など犯罪組織に流れないようにする治安対策の一環でもある(指針前文)。
同プログラムでは、最長12カ月間の事業所内研修を受けることを条件に、18~29歳の未就労・未就学の若者に対して月額3,600ペソ(約2万880円、1ペソ=約5.8円)の奨励金を支給する。全国32州で展開するため地域の制限はないが、申請時点で就学あるいは就労している若者は対象外となる。研修を受け入れる事業所は、官庁、民間企業、社会団体などで、STPSにプログラム参加を登録し、各事業所で研修員の受け入れに際した研修計画を策定する必要がある。
企業にとっては単純労働力確保とCSRがメリット
奨励金は、研修に参加する若者に直接支給されるため、企業が受け取ることはない。また、就学や就労していない若者が対象のため、高学歴ながら就労できない若者がある程度いると想定されるものの、特殊技能や学識を必要とする従業員候補の育成には向かない。従って、企業にとって本プログラムに参加するメリットとしては、離職率が高い地域など単純労働力の安定確保が困難な事業所において、将来の一般ワーカーの候補として研修を受け入れる目的、あるいは現政権の重点社会政策に参加することにより、企業の社会的責任(CSR)をアピールする(プログラム参加証明書は申請すれば発行される)目的が中心となるだろう。
企業や団体は、受け入れる研修員を自ら選ぶことはできない。原則として、登録された複数の事業所の中から、研修員(若者)が職場を選択する。各事業所では1日5~8時間、週に5日、研修員を実務研修に従事させる。なお、日中勤務のみで、夜間は不可能、残業はさせられない。プログラムへの参加を希望する企業・団体は、研修員の指導員(チューター)を指名し、STPSのウェブサイトから参加登録できる。
(中畑貴雄)
(メキシコ)
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