ブレグジット後の移民制度の概要を発表
(英国、EU)
ロンドン発
2018年12月20日
英国政府は12月19日、EU離脱(ブレグジット)後の移民に関する白書を公表した。人の自由移動を終了させ、欧州経済領域(EEA)の市民を優遇しない、技能に基づく制度を2021年から導入する。
新制度では、EEAからの移民もビザが必要となることから、第2階層ビザ(Tier2)の「一般」枠の年間2万700人の上限を廃止して技能労働者の受け入れを拡大する。加えて、移民に求める技能の基準を下げ、労働市場テスト(注)を廃止するなど、要件を緩和する。他方、移民助言委員会(MAC)が9月の提言(2018年9月20日記事参照)の中で維持することを推奨していた年収3万ポンド(約426万円、1ポンド=約142円)以上という要件は、産業界などから意見を求めた上で決定する。
政府は、新制度により英国の雇用者は世界中の熟練労働者にアクセスしつつ、移民の流入を持続可能なレベルまで減少させることができる、としている。政府は2010年、移民の純増を年間10万人以下に抑える公約を掲げたが、その後毎年15万~33万人の純増が続いてる。他方、労働力不足に直面する可能性がある業界・企業の懸念を踏まえ、当座の措置として、技能レベルを問わない短期労働者の就業を可能にする新しいビザを導入する。これによって、季節労働者や非熟練労働者による活用が見込まれ、12カ月の滞在を許可するものの、家族の呼び寄せや年金受給はできない。また、ビザを一度失効すると12カ月間は申請できないほか、出身国も限定される。
この制度は2025年まで継続的に見直し、それ以降も同様の仕組みの必要の有無を判断する。留学生ビザについては、人数制限がなく、卒業後の滞在可能期間を学士・修士の場合は6カ月、博士の場合は12カ月に拡大する。その他、EU市民のID利用の廃止や電子渡航認証の導入、日本やオーストラリア、カナダ、ニュージーランド、米国、シンガポール、韓国の市民は入国審査時に英国人やEU市民が利用しているeゲートの利用が可能になることなどが盛り込まれた。
英国産業連盟(CBI)のジョシュ・ハーディ事務局次長は、白書の内容は国内の需要とは合わず多くの企業にとって打撃となると批判した。さらなる意見公募が必要で、企業が新制度の適用開始までの準備期間を十分確保するよう訴えた。
(注)労働市場テスト:国内で一定期間の求人広告によって人材を確保できなかったことを証明するもの。
(鵜澤聡)
(英国、EU)
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