メイ首相不信任回避も、離脱協定の議会承認はなお困難
(英国、EU)
ロンドン発
2018年12月13日
英国のEU離脱(ブレグジット)をめぐって混乱が続く英国の与党・保守党では12月12日、テレーザ・メイ首相に対する不信任投票が行われた。結果は信任が200票、不信任が117票で、メイ首相の続投が確定した。党規則により、少なくとも向こう1年間は、メイ首相に対する不信任投票が行われることはない。
保守党の規則に従い、同党所属下院議員の15%に当たる48人の議員が、12月12日までの不信任投票を要求したことで、投票が実現した。反対勢力の批判を抑えるため、メイ首相は午後6時からの投票に先立ち、2022年6月に予定されている次回総選挙前の退任を党議員に約束した。しかし、具体的な退任時期の明言は避けた。
信任されたメイ首相は官邸で会見し、党議員から支持されたことへの感謝とともに、反発する議員や議会の声に耳を傾けたことを強調。北アイルランドのバックストップについて、12月13~14日に開催される欧州理事会(EU首脳会議)でEUから「法的・政治的な」確約を得るべく働き掛けを行う、とコメントした。しかし、EU側では欧州理事会のナルド・トゥスク常任議長、欧州委員会のジャン=クロード・ユンケル委員長、アンゲラ・メルケル・ドイツ首相、レオ・バラッカー・アイルランド首相らが、異口同音に離脱協定の取り決めに関する再交渉は行わないことを明言し(2018年12月12日記事参照)、調整の余地は限定的だ。その一方で、英国下院で与党に閣外協力する北アイルランドの民主統一党(DUP)は離脱協定そのものに反対し(関連ブラック ジャック トランプ)、保守党内の離脱強硬派の一部も賛成に回る可能性は低いとみられていることから、離脱協定が議会で承認される見通しが厳しいことに変わりはない。
今回の保守党の不信任投票について、英産業連盟(CBI)のキャロライン・フェアバーン事務局長は「政治家は30カ月にわたる果てしない内輪もめに終止符を打ち、実行可能な合意を成立させることに一体となって取り組むべきだ。企業も国家も混乱はもうたくさんだ」とコメント。英国商工会議所(BCC)のアダム・マーシャル事務局長も「離脱までわずか100日余り。政府も企業もノー・ディール(合意なき離脱)の準備はできていない。議会の全勢力はそれを回避するための努力を加速させるべきだ」とコメントした。政府・議会に対し、円滑な離脱に向けて真剣に取り組むよう求めている。
(宮崎拓)
(英国、EU)
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