抗議デモ運動、マクロン大統領が対応策を発表
(フランス)
パリ発
2018年12月12日
マクロン大統領は12月10日、国民に向けたテレビ・スピーチで、「ジレ・ジョーヌ(黄色いベスト)」運動への対応策を発表した。大統領は抗議デモに伴う暴力・破壊行為を糾弾しつつ、「抗議活動の発端に、多くのフランス国民が共有する怒りがあることを忘れない」とし、経済不安への「迅速で強力な対応を、(就任から)1年半の間に打ち出すことができなかった。私に責任の一部はある」と話した。その上で、社会・経済的な緊急事態に対応するため、より早急な減税の実施、財政支出のさらなる効率化を推し進める意向を示した。
具体的には、次のとおり。
- 法定最低賃金(月額1,498.47ユーロ)で働く労働者の給与を、2019年1月から「雇用主に負担をかけないかたちで」100ユーロ引き上げる。
- 2019年1月から残業手当にかかる税・社会保険料を免税にする。
- 年末ボーナスにかかる雇用主の税・社会保険負担を免税にする。
- 年金受給の月額が2,000ユーロに満たない定年退職者に対し、2018年に導入された一般社会税(CSG)の引き上げを廃止する。
これに関連する財政負担は80億~100億ユーロで、2019年の財政赤字(GDP比)は3.5%近くまで上昇するとみられる。政府は2019年予算法案で、2.8%と予測していた。
今回の発表について、ジレ・ジョーヌの一部からは既に、対応が不十分だとして12月15日に再びデモの実施を呼び掛ける声も出ている。抗議活動の行方は今のところ、不透明だ。
12月11日に「ル・フィガロ」紙が発表した世論調査の結果によると、マクロン大統領のスピーチに「説得力がなかった」とする人の割合は59%となり「説得力があった」とする人の割合(40%)を大きく上回った。一方で、ジレ・ジョーヌの抗議活動について「続けるべきだ」と回答した人の割合は54%と半数を超えたものの、前回(11月22日)の調査結果(66%)から大きく低下した。抗議活動を「やめるべきだ」と回答した人の割合は46%で、前回の34%から12ポイント上昇した。
(山崎あき)
(フランス)
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