ガスプロムの円建て私募債、JBIC保証で投資需要集まる

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2018年12月20日

天然ガス採掘最大手のガスプロムは12月3日、日本の国際協力銀行(JBIC)の保証による円建て私募債を総額650億円発行した。同社は2007年にも総額500億円の円建て債券を起債したが、JBICの保証を受けるのは今回が初めてとなる。

発行体はガスプロムの特別目的会社(SPV)「ガスアジア・キャピタル」(ルクセンブルク)で、年限10年、利率は1.01%。幹事会社はみずほ証券、SMBC日興証券、JP モルガン・セキュリティーズ(英国)、ガスプロムグループの金融機関ガスプロムバンク、同行の子会社・俄氣金融香港(GPB Financial Services Hong Kong)。

報道によると、今回の債券にはガスプロムが付ける保証に加えて、JBICが元利金の95%で信用を補完する。引受者の対象が適格機関投資家に限定された私募債形式で、ガスプロムバンクのデニス・シュラコフ第1副社長によると、650億円の発行に対し20件を超える総額800億円の引き受け申し込みがあったという。発行額のうち85%は日本の機関投資家が引き受け、中でも都市銀行が46%、協同金融機関の信用金庫が18%を占めた(「ベドモスチ」紙12月14日)ほか、資産運用会社、生命保険会社などからも申し込みが集まった。取引関係者筋は「JBICの保証供与を日本人投資家が評価した結果」と説明している(ロイター/IFR 12月7日)。

米国の制裁を受けているロシアでは、その影響低減のため資金調達先の多様化を図っている。ガスプロムはユーロ市場で2018年2月に7億5,000万ユーロ、3月には7億5,000万スイス・フラン(約847億5,000万円、1スイス・フラン=約113円)、さらに11月には10億ユーロの資金を調達。最近ではアジア市場も注目されており、11月には電力大手のルスギドロが人民元建てのユーロ債15億元(約240億円、1元=約16円)を発行した(電力大手ルスギドロがユーロ元債発行、カジノ)。ロシア財務省も2019年に人民元建て連邦債(国債)の発行を予定するなど、アジア金融市場との関係強化に意欲的とされる(Cbondsニュース12月12日)。

JBICは今回の円建て外債の保証について、「日本政府の推進する日ロ経済関係の深化にも寄与するもの」としている。

(市谷恵子)

(ロシア)

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