大統領の国会解散などは違憲、最高裁が判決
(スリランカ)
コロンボ発
2018年12月19日
スリランカ最高裁は12月13日、シリセナ大統領による国会解散や政治混乱のきっかけとなったラージャパクサ前大統領の首相任命を含む閣僚の変更など、国会の賛同を得ずに大統領が独裁的に進めた一連の決定を違憲とする判決を下した。これを受け、ラージャパクサ氏は12月15日に首相辞任を表明し、翌16日には前首相のウィクラマシンハ氏があらためて首相に任命された(注)。結果的に一連の政治混乱が起こる前の体制に戻った格好だ。
最高裁の判決により、2019年1月5日に実施が予定されていた国会の総選挙はなくなり、スリランカの政治混乱(2018年11月21日記事参照)は収束に向かうことが期待される。しかし、一度分裂したシリセナ-ウィクラマシンハ体制の復活は政権内に火種を残したこととなり、難しいかじ取りが迫られそうだ。
10月末から約50日間にわたる政治混乱は経済にも大きな影響を及ぼした。スリランカ・ルピーは売りに拍車がかかり、史上最安値となる1ドル=180スリランカ・ルピーの水準で推移している。また、観光局は11月、通年の観光客数目標値を300万人から250万人に下方修正した。加えて、行政機能の停止により各種許認可の処理が滞ったため、公共事業にも停滞がみられており、経済成長の下振れ懸念も拭い切れない。
2019年度の予算編成も遅れている。通常、スリランカでは11~12月の国会審議を経て次年度予算案が承認されるが、今回の政治混乱により未承認のままだ(12月18日現在)。行政の機能停止を防ぐためには、国会を早急に正常化し、次年度予算案や少なくとも第1四半期予算案の審議を開始することが喫緊の課題といえる。
スリランカでは2020年1月に次期大統領選が行われる予定だが、政局の混乱を引き起こしたシリセナ大統領が選挙前に責任を問われる可能性がある。
(注)シリセナ大統領はウィクラマシンハ氏の首相再任は「絶対にない」と発言していたが、最大勢力である統一国民党(UNP)を中心に国会で同氏の信任決議を2度可決しており、首相に任命せざるを得なかった経緯がある。
(井上元太、ウィーラコーン・スバーシニ)
(スリランカ)
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