欧州委、承認済みの離脱協定案が「唯一かつ最良」と強調

(EU、英国)

ブリュッセル発

2018年11月30日

欧州委員会のミシェル・バルニエ首席交渉官は11月29日、英国のEU離脱(ブレグジット)問題についての現状認識を欧州議会本会議で明らかにし、11月25日の臨時欧州理事会()で承認された離脱協定案および政治宣言案が想定し得る「唯一かつ最良」の解決策との見解を示した。12月11日に控える英国議会での採決を意識し、英国側での協定内容の見直しや再交渉を求める動きを牽制する発言とみられる。

欧州議会選挙を控えて結論を急ぐEU

バルニエ首席交渉官は「離脱協定および政治宣言をめぐる交渉の時は終わった」「英国議会や欧州議会、EU理事会はその承認を急ぐべき段階だ」と語り、英国議会が離脱協定案および政治宣言案を否決した場合の(協定見直しのための)交渉継続について否定的な考えを示唆した。また、ブレグジット交渉をめぐる政治状況の特殊性や協定内容の複雑性を挙げ、これ以上の交渉継続の意義に疑念をにじませた。

EU側では、2019年5月の欧州議会選挙(関連ブラック ジャック web)を控え、欧州議会各会派は、投票時点で英国がEUを離脱しているとの想定で、次期欧州委員会委員長の候補指名などの準備を進めている。同議会の保守系会派「欧州保守改革グループ(ECR)」内で現在の最大勢力は英国保守党系議員(ECR73議席中、19議席)で、現在のECR代表も英国選出議員が務めるが、次期欧州委員会委員長候補にはチェコ選出のヤン・ザラディル議員を指名している。こうした背景もあり、EU側には、欧州議会選挙前には英国の立場を明確にしておきたいという事情がある。

(前田篤穂)

(EU、英国)

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