2019年1月から最低賃金9.4%引き上げ、企業側は負担増を懸念
(チェコ)
プラハ発
2018年11月28日
チェコ内閣は11月20日、最低賃金に関する政令の改正案を可決した。これにより、2019年1月1日から月額1万3,350コルナ(約6万5,400円、1コルナ=約4.9円)に1,150コルナ(9.4%)引き上げられ、1時間当たりでは73.20コルナから79.80コルナになる。
同法案を提出したヤナ・マラーチョバー労働・社会福祉相〔チェコ社会民主党(CSSD)〕によると、現在国内で最低賃金を受け取っている労働者数は約15万人。同相は「賃金は労働意欲を鼓舞するものでなければならず、労働しているにもかかわらず生活保護を受給しなければ生活できないような事態は断じて避けなければならない。チェコ経済は堅調な成長を示し、チェコの労働生産性はドイツの70%に達しているが、賃金はドイツの30%にすぎない(注)。最低賃金上昇は平均賃金の上昇につながるので、労働者全員の利益となる」と説明している。
雇用者団体は、1,150コルナの引き上げは過度だとして、今回の政令可決に対して遺憾の意を表明している。国内最大の雇用者団体である産業連盟は、引き上げ額を800コルナに抑えることを要望していた。同連盟のヤロスラフ・ハナーク会長は「仕入れ・原料費、光熱費が高騰し、また中央銀行の金利引き上げ実施により、融資を受けることが困難となりつつある中、最低賃金の大幅引き上げは、特に中小企業にさらなる負担を課すものだ」として、内閣決定を強く批判している。
産業連盟は、長期的な、最低賃金引き上げの客観的かつ明確な規則を設定するよう求めている。ANO 2011とCSSDの中道左派連立政権は、その綱領において「定期的な最低賃金引き上げの規則を定める」と宣言しているが、現在のところ明確な規則は定められていない。マラーチョバー労働・社会福祉相は、平均賃金の50%達成を目標とすべきと提案している(2017年の平均賃金は2万9,504コルナ)。
(注)EU統計局(ユーロスタット)によると、2018年のチェコの最低賃金月額が469ユーロなのに対して、ドイツは1,498ユーロ。
(中川圭子)
(チェコ)
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