EU離脱担当相ら辞任、合意案に反発
(英国、EU)
ロンドン発
2018年11月16日
英国のEU離脱(ブレグジット)に関する協定と政治宣言の実務レベルでの合意文書が英政府の閣議で承認された翌11月15日朝、ドミニク・ラーブEU離脱担当相が合意案を支持できないとして辞任した。同ポストの辞任は、英政府が首相別邸「チェッカーズ」で合意したEUとの将来関係に関する方針に反対した前任のデービッド・デービス氏に続き2人目(2018年7月10日記事参照)。ブレグジット担当閣僚の辞任はメイ政権にとって大きな打撃で、12月にも行われる可能性がある議会での採決で、合意文書に反対票を投じる議員が増えることも考えられる。
ラーブ離脱相はメイ首相に宛てた辞表の中で、2つの理由から合意案に賛成できないと説明。1つ目の理由について「北アイルランドを対象とする制度適用の仕組みは、英国の一体性にとって真の脅威」とし、北アイルランドのみEU規制を適用する「バックストップ」の規定を批判した(2018年11月15日記事参照)。2つ目は、EUが拒否権を持つ、期限のないバックストップの取り決めを挙げている。
ラーブ離脱相の辞任からおよそ1時間後には、早くから辞任の可能性が高いとみられていたエスター・マクベイ労働・年金相も辞任した。ほか、スーラ・ブラバーマンEU離脱担当政務次官、レーマン・チシュティ保守党副幹事長らEU離脱派議員が政府・党の要職を辞任した。離脱相は11月15日夜時点で空席のままだ。
与野党問わずメイ首相に厳しい批判
こうした中、メイ首相は同日、下院で合意案を報告。「ノー・ディールで離脱するのか、いっそブレグジットしないのか、それとも団結して、今後さらに交渉ができる最善の道であるこの合意を支持するかだ」と述べ、今回の合意案を基に離脱を実現する決意をあらためて示した。しかし質疑応答は3時間におよび、与野党問わずEU離脱派、残留派の双方から厳しい批判が浴びせられた。閣外協力する北アイルランドの地域政党、民主統一党(DUP)のナイジェル・ドッズ副党首も「これで選択肢が明らかになった。英国の一体性のために立ち上がるか、属国に向かう合意案に投票するかだ」と発言するなど、情勢は厳しさを増している。政府がDUPや保守党のEU離脱派をどれだけ説得できるか、なお予断を許さない。
(宮崎拓)
(英国、EU)
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