延滞債務者の救済で合意、首相が発表
(ジョージア)
欧州ロシアCIS課
2018年11月21日
ジョージアのマムカ・バフタゼ首相は11月19日、商業銀行・小規模金融業者・債権回収業者などとの間で、国民の延滞債務15億ラリ(5億6,000万ドル)の返済を免除することで合意したと発表した。
同首相のブリーフィングによると、返済免除の対象は、商業銀行・小規模金融業者により貸与されたローンの元本が2,000ラリ(751ドル)以下で、金融機関の「ブラックリスト」に登録されている延滞債務者(1年以上返済が滞っている者)。リスト全体の債務額の95%、国民60万人(人口の16%)が対象になるとしている。取り消しに係る手続きは12月15日から31日までで、延滞債務者の記録がリストから抹消される。同首相は国際慈善基金「カルトゥ」が返済免除に大きな役割を果たしたと強調、感謝の意を表明している。同基金の理事長は与党「ジョージアの夢」創立者の1人で億万長者(注)のビジナ・イワニシビリ氏。
報道によると、「カルトゥ」は商業銀行・小規模金融業者からの債権の買い取り資金1億ラリ(3,760万ドル)を拠出する。一方、小規模金融業協会のベシク・シェンゲリヤ会長は「政府との会合で細かい話は聞いていない」と述べ、関係者との合意に至ったとの首相発言に疑問を呈している。
ジョージアでは小規模金融業者が手続きの迅速さや便利さをうたい、高金利の少額ローンを国民に過度に提供した結果、多くの国民が給与や年金の大半を債務返済に充てねばならないなど社会問題となり、対策が求められていた。バフタゼ首相は今回の措置で「多くの家族が債務のない状態で新年を迎えることができる」「過剰債務の削減は貧困撲滅への前提条件」と述べている。一方、IMFジョージア事務所のフランソワ・パンショー氏は今回の債務免除について、「債務が第三者により免除されるとの期待が生まれると、自らの債務を軽く考えるようになる」と、モラルハザードが発生する可能性に言及している。また、11月28日に大統領選挙の決選投票を控えているため、今回の措置に政治的な意図を指摘するメディアもある(「RBK」11月19日)。
(注)フォーブス誌「世界の億万長者」ランキング2018年度版によると、同氏の資産額は世界456位の46億ドル。
(高橋淳)
(ジョージア)
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