英国政府、2019年度予算案を発表
(英国)
ロンドン発
2018年11月02日
英国政府は10月29日、2019年度(2019年4月~2020年3月)予算案を発表した。予算案のベースとなる予算責任局(OBR)の「経済・財政見通し」によると、2018年の実質GDP成長率は前回予測(2018年3月、2018年3月23日記事参照)より0.2ポイント引き下げられ1.3%となった一方で、2019年は0.3ポイント増の1.6%となった(表1参照)。2020年と2021年は1.4%にとどまる見通し。
政府の財政構造についてみると、2018年度の政府純借り入れは255億ポンド(約3兆6,720億円、1ポンド=約144円)と前回予測より116億ポンド減少し、2019年度には一時的に増加するものの、2020年度以降は再び減少に転じる(表2参照)。また、GDP比での公共部門純債務比率も2022年度にかけて75.0%まで減少する見通しとなった。政府は約10年前の金融危機以降、緊縮財政を継続している。フィリップ・ハモンド財務相は、緊縮財政の終了については明言しなかったものの、前年から改善した財政構造に関して「(緊縮財政の)終わりの時は近づいている」とコメントした。
2019年度の歳出額は、全体で前年度より4.1%増となる8,420億ポンドで、医療や社会保障分野などで増加した(表3参照)。
英国のEU離脱(ブレグジット)対応については、2019年以降に新たに5億ポンドが確保された。2018年3月の春季財政報告でも15億ポンドの追加予算を確保済みで、ブレグジット関連予算はこれまでの累計で40億ポンドを超える。
ビジネス関連では、2019年4月から2年間は小規模の小売事業者に対して、固定資産税に当たる「事業税(ビジネス・レート)」の税率を3分の1下げる。また、就業しながら学校に通える見習い制度についても、企業負担を軽減する。一方で、2020年4月からは、ソーシャルメディアや検索エンジンなどの巨大IT企業に対して、英国内の売上高の2%をデジタルサービス税として課す。
公共福祉の分野では、最優先の分野として、国民保健サービス(NHS)に約200億ポンドを追加拠出する。
労働者に関しては、2019年4月から最低賃金が8.21ポンドに引き上げるほか、個人所得税の基礎控除枠も1万2,500ポンドまで引き上げる。
(木下裕之)
(英国)
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