保守党大会、EU離脱で一致も通商方針は平行線

(英国)

ロンドン発

2018年10月01日

与党・保守党の党大会が9月30日、バーミンガムで始まった。英国のEU離脱(ブレグジット)を半年後に控え、党幹部や閣僚からはブレグジット実現への決意や意義を強調する発言が相次いだ。

ブランドン・ルイス党幹事長は大会冒頭の演説で、EU離脱後の「機会」に焦点を当て、党が一体となることを訴えた。機会は今大会のスローガンでもある。同幹事長は保守党が自由、公正、機会を尊重し、中小企業を含む民間事業者を支援する立場を強調。ジェレミー・コービン党首の下、社会主義的政策を強める労働党との対決姿勢を鮮明にした。労働党は前週に開催された党大会で、大企業の株式の最大10%を基金に割り当て、配当を従業員に支払うことを義務付ける計画などを発表している。

対外経済関係について、リアム・フォックス国際貿易担当相は、現在GDP比約30%のモノ・サービスの輸出を、ブレグジット後に35%程度まで拡大させる考えをあらためて示した。同相はEUの市場としての重要性を認めつつも、アジアやアフリカなど欧州より高成長を続けている地域に目を向ける必要性を指摘。米国との自由貿易協定(FTA)や「環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)」を追求する意義を強調した。

ブレグジット後の独自の通商政策については、テレーザ・メイ首相のブレグジット交渉方針(チェッカーズ提案)を批判するEU離脱強硬派の議員からの発言が相次いだ。ジェイコブ・リースモグ議員は演説で、モノの貿易でEUと共通の規則を維持するチェッカーズ提案は競争力のある独自の通商政策をもたらさないとして、政府はFTAに多数の相互承認を組み合わせた通商関係を目指すよう、交渉方針の変更を訴えた。

離脱強硬派が推す通商モデルは、カナダとEUのFTAを基にする「カナダ・プラス」などと呼ばれ、9月24日に民間シンクタンクの経済問題研究所(IEA)が、26日にはボリス・ジョンソン前外相が「デイリー・テレグラフ」紙への寄稿で類似の代替案を示している。ジョンソン前外相は党大会に先立つメディアの取材でチェッカーズ案を「常軌を逸している」と強く批判している。

他方、メイ首相はメディアの取材に対し、「英国にとってとても良いFTAをEUと実現することがチェッカーズの核心だ」とコメントし、同案の有効性を重ねて強調。グレッグ・クラーク・ビジネス・エネルギー・産業戦略担当相は党大会のサイドイベントにて、カナダ・プラスの通商関係では国境におけるシームレスな貿易が困難なため、企業の競争力に悪影響を及ぼすと指摘するなど、閣僚らは引き続き同案を支持している。党大会初日を終え、党内に歩み寄りは見られていない。

(宮崎拓)

(英国)

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