欧州自動車工業会、「合意なき離脱」に警鐘

(EU、英国)

ブリュッセル発

2018年10月18日

欧州自動車工業会(ACEA)は10月17日、英国のEU離脱(ブレグジット)に関連して「(合意なき離脱という)最悪のシナリオ」を回避すべきとする声明を発表した。伝統的に「ジャスト・イン・タイム」が取引慣行となっている自動車産業にとって、EUと英国の間の本格的な通関手続き復活がいかに効率的なビジネスフローを阻害するかを強調した。また、一部の会員企業は不測の事態に備え、英国の生産拠点での部品在庫を維持するための倉庫確保や、ブレグジット直後の混乱回避のための臨時操業停止を計画しているという。

「合意なき離脱」シナリオを織り込み始めた自動車産業界

ACEAは「毎日、約1,100台のトラックが英仏海峡を横断し、英国の自動車やエンジンの生産拠点に各種部品を供給している」とし、ブレグジット以降、通関手続きで部品搬送が停滞した場合には「それが短時間であったとしても、輸送上の大きな問題を引き起こし、生産工程を阻害し、多大なコストが発生する」としている。

ACEAのエリック・ヨナー事務局長は「われわれの会員企業は既に緊急対策計画(コンティンジェンシー・プラン)を作成し、必要となる部品在庫を確保するための倉庫を探し始めている」と語り、十分な在庫スペースを確保するためには「相当のコスト負担を覚悟しなければならない」と指摘した。また、同事務局長は「幾つかの会員企業はブレグジット直後の(混乱を回避するための)一時的な生産ライン停止も計画している」と述べ、英国がEU単一市場から離脱するリスクに言及した。

このほか同事務局長は、合意なく離脱した場合、EU・英国間で取引される完成車にWTO協定税率(MFN税率)で10%の関税が課される点について触れ、「忘れてはならないことは、自動車産業の利益水準が(関税が課されていない)現状でも10%を下回っている事実だ」と語った。最終的にブレグジットに伴うさまざまなコストは、「消費者に転嫁するか」「生産企業が負担するか」の選択を迫られるという。こうした事態を回避するためにも、ACEAとしては、EU・英国の両者に着実な離脱協定妥結を求めるとしている。

(前田篤穂)

(EU、英国)

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