仮想通貨事業者の銀行口座開設を円滑化
(スイス)
ジュネーブ発
2018年10月09日
スイス銀行組合は、これまで事実上認められていなかった仮想通貨関係事業者への銀行口座開設を円滑に進めるためのガイドラインを公表した。これは、スイスに集積している仮想通貨関連事業者にとってはビジネス環境改善に向けた一歩となりそうだ。
スイス最大の都市チューリヒや近郊のツーク(ツーク州)は、企業への税制優遇、工科大学や応用科学大学の存在から、フィンテック企業の集積が進みつつある。特にツークは、ブロックチェーン(注)の1つ「イーサリアム」を運営する財団や、350以上の仮想通貨関連事業者が本籍を置いており、世界屈指の仮想通貨関連企業の集積地として「クリプトバレー(仮想通貨の谷)」と呼ばれている。ツーク州政府もブロックチェーン技術を用いた起業を支援しており、住民の電子番号導入や、2018年7月には住民投票にブロックチェーン技術を用いたシステムの実証試験などを行なっている。
他方、スイスにおける金融産業は、マネーロンダリングやテロ対策の観点から従来の守秘義務が国際的な非難を浴びて、顧客の身元確認など厳しい規制が導入されてきており、集積しつつある仮想通貨事業者が国外流出する可能性を懸念する声が上がっていた。
これに対しスイスでは、今回のガイドラインのほか、金融監督庁(FINMA)が2018年2月に、仮想通貨発行を伴う資金調達(ICO)のガイドラインを世界に先駆けて発表している。
金融関係者側からのブロックチェーン技術活用の取り組みも活発化している。UBS(本社:チューリヒ)やクレディ・スイス(本社:チューリヒ)のOBが設立したSEBAクリプトは、FINMAから世界でも初めての仮想通貨を取り扱う銀行としての免許を取得するため、1億スイス・フラン(約115億円、CHF、1CHF=約115円)の資金調達を行い、2019年には事業を開始すると報じられている。また、スイス証券取引所(SIX)は、ブロックチェーン技術を用いた証券取引プラットフォームを2019年中に立ち上げることを明らかにしている。
(注)大量の電子データを暗号技術により偽造不可能なかたちでつなげていくことでデータの分散共有を効率的に行う技術のこと。
(和田恭)
(スイス)
ビジネス短信 9500b1783f08316f