2020年までの5カ年計画を改定、GDP成長率など下方修正
(マレーシア)
クアラルンプール発
2018年10月25日
マハティール首相は10月18日、現行の国家5カ年計画「第11次マレーシア計画」(2016~2020年)の中間評価および同計画の改定版を発表した。既に終了した2016~2017年については「不安定な世界情勢の中にあっても、マクロ経済は好調だった」と評した。過去2年間の平均実質GDP成長率は5.1%と、当初計画の目標値である5.0~6.0%の範囲内に収まった。改定版の5カ年計画では、財政安定化と包括的成長を目指し、新たな6つの柱を軸に、19の優先分野と66の戦略を策定した。
政府のガバナンス改革に力点
改定版では、(1)公共サービスの透明性と効率性向上に向けたガバナンス改革、(2)包括的発展と福祉の強化、(3)公平な地域発展の追求、(4)人的資本の能力開発、(5)環境配慮型の成長を通じた環境持続性の強化、(6)経済成長の増進、の6つの柱を軸とする。
マハティール首相は、汚職や横領、職権乱用のない政権運営による「良好なガバナンスの下、強固な制度を構築し、信頼性を強化する」点を強調した。また、国民の生活向上を保証するとともに、州間の格差を是正するための公平な地域発展、低所得者層(B40)の購買力底上げなどにも注力する。
2020年の高所得国入り目標は先送り
5年間で投じる開発予算は、財政安定化を優先し、当初計画の総額2,600億リンギ(約7兆200億円、1リンギ=約27円)から2,200億リンギに縮小した。
同様に、経済指標の目標値についても、当初からの下方修正を行った。2018年から2020年までの平均実質GDP成長率は4.5~5.5%とした。1人当たり国民総所得(GNI)は、2020年までに1万5,000ドル超を目指していたが、1万1,700ドルに下方修正した。その上で、世界銀行による高所得国の基準(1万2,235ドル超)は、2024年に達成する見込みとした。
オンライン取引への課税を検討
インフレ率については、原油価格の緩やかな上昇が予測されるものの、年平均2.0~3.0%とした。政府債務のGDP比率は、前政権の報告では2017年時点で50.8%だったが、実際は80.3%だったことを受け、新たな債務管理システムを導入し、債務残高を定期的に公開する方針を定めた。2020年の財政収支目標は、均衡からGDP比3.0%の財政赤字に修正した。税収面では、eコマースやシェアリングエコノミーなどデジタル市場の高成長を背景に、オンライン取引に対する課税を検討する。
(田中麻理)
(マレーシア)
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