英会計検査院、ブレグジット後の国境管理の準備は不十分と指摘

(英国、EU)

ロンドン発

2018年10月26日

英国会計検査院は10月24日、英国のEU離脱(ブレグジット)から必要となる新たな国境管理政策の準備状況に関する報告書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を公表した。検査院はその中で、EUとの交渉がまとまらずに先行き不透明な状態が続いていることが、政府の関連部門による国境管理施策の立案と準備に悪影響を与えていると指摘。「ノー・ディール」となった場合、EUから離脱する2019年3月29日午後11時時点で国境管理は不十分な状態になり、通関の混乱などに加えて組織的な犯罪集団による不正行為などのリスクにさらされるとして、政府に対策を迫っている。

政府は2017年3月、歳入関税庁(HMRC)が中心となり省庁横断的に国境管理問題に対応する専門部署を内閣府内に設置。主にモノの貿易に焦点を当て、ブレグジット後に必要となる制度・システムの変更などについて、計画の立案と導入の準備を進めてきた。

今回発表された報告書はこれらの準備状況を評価したもので、専門部局などの努力は評価しつつも、準備は不十分だとしている。例えば、通関手続きや検疫、関税・付加価値税などの徴収など12のITシステムのうち11のシステムは準備が十分に進んでいないと指摘。特に他国に向かうトランジット貨物の手続きや、EUとの交渉でも難問となっている北アイルランド・アイルランド間の国境管理に関わるシステムはほとんど着手されていないという。

報告書はさらに、EUとの交渉の進捗が遅く、将来の英国とEUの通商関係がどのようになるか不透明であることにより、円滑な離脱の場合に必要となる国境管理の計画立案は、ノー・ディールの場合に必要となる計画よりさらに進展していない、としている。

HMRCによると、同庁が処理する通関申告は年間5,500万件で、ノー・ディールとなった場合、これが2億6,000万件に急増すると見込んでいる。また、初めて税関申告を行う必要に迫られる英国の事業者を14万5,000~25万社程度と推計。報告書では、こうした事業者への影響は大きく、準備に必要な時間は不十分だとしている。

(宮崎拓)

(英国、EU)

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