財政収支均衡を目的とした「再建パッケージ」を発表
(アルゼンチン)
ブエノスアイレス発
2018年09月05日
アルゼンチンのニコラス・ドゥホブネ財務相は9月3日、記者会見を行い、財政収支の均衡を目的とした「再建パッケージ」を発表した。具体的な中身としては、2019年および2020年の基礎的財政収支(プライマリーバランス)の目標を新たに設定し、2019年はGDP比で0%に、2020年は1.0%の黒字を目指す。政府は5月のIMFの協定に際して既に財政目標を提出していたが、今回の新たな財政目標によると、2018年の目標は変わらないものの、2019年および2020年の目標が前回のものより厳しいものとなった。
同相は、2019年の財政収支均衡を達成するために、公共事業向け予算(GDP比:0.7%)、電気料金と公共交通利用料金への補助金(0.5%)、公務員の賃上げ抑制(0.2%)といった一連の削減案を発表した。公共料金の補助金については、各州政府が管轄することにした。また、2022年までに雇用主の社会保障関連負担金の課税最低額を毎年引き上げる措置をとっていたが、それを1年間停止することも発表した。
また、政府は9月4日、政令793/2018号を公布し、同日から2020年12月31日まで、全ての消費財に対し、12%の輸出税を課税すると発表した(注)。ただし、課税額の上限は(1)1ドル当たり4ペソ(約12円、1ペソ=約2.9円)、(2)または当該輸出品目のFOB価額とされたため、上記税率の12%を超えない場合もある。他方、同政令付属書Iに掲載されている品目では、上限を1ドル当たり3ペソとした。
なお現政権は、2015年12月に主要農産物および工業製品に対する輸出税を撤廃したが、例外的に輸出税が残っていた大豆および大豆副産物については、9月4日から18%(一部大豆を含むものは11%または16%、詳細は付属書IIを参照)とし、品目によって1ドル当たり4ペソまたは3ペソが従価税として課されることとなった。アルゼンチンの農業関連専門家らによると、現在の為替レート(1ドル=37~40ペソあたり)が保たれた場合、大豆および大豆副産物の課税率は実質的に28.5~29.0%に上昇するとのことだ(「ラ・ナシオン」紙9月3日)。
今回の発表によって、大豆以外の主要輸出農産品の輸出税は、現在の為替レートが保たれた場合、実質的にトウモロコシが10%、小麦が11%、牛肉と牛乳が7.9%の水準になると見込まれる。今回の輸出税制の変更によって、2018年には約680億ペソ、2019年には2,800億ペソの税収が確保できる見通しだ。
(注)ドゥホブネ財務相の会見では、財に加えてサービスにも輸出税を課す旨の言及があったものの、政令では財のみとなっている。
(山木シルビア)
(アルゼンチン)
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