ヤンデックス、自動運転車の実用化に自信
(ロシア)
モスクワ発
2018年09月21日
第9回モスクワ国際自動車フォーラムの報告2回目。初日後半に「自動車産業のイノベーション」と題し、ロシアにおける電気自動車(EV)と自動運転技術の現状と課題について議論が行われた。
プライスウォーターハウスクーパース(PwC)ロシアのビクトリア・シニチキナ自動車コンサルティング部長によると、EVのロシアでの販売シェアは2018年で0.06%の見込みで、2025年でも0.16%を占めるにすぎないという。普及には充電施設の整備のほか、購入の際の補助金や税金の優遇などインセンティブが重要と述べた。モスクワ郊外のイノベーション拠点を運営するスコルコボ財団のキリル・ジャイダロフ輸送インフラ事業部長も、EVやEV生産のための部品・設備・インフラの輸入関税や車両に課される輸送税の免除を提案した。
モスクワ州政府のレオニド・ネガノフ・エネルギー相は、EVの普及に当たり充電施設の整備が重要と認めた。モスクワ市および州内には約200の充電施設があるそうだ。しかし家庭電気料金が安いので、EV充電の85%が夜間に自宅で行われるとすると、新たに充電施設を設置しても投資回収が見込めないという試算結果を提示した。このため、官主導でスポーツ施設など公共施設に充電設備を併設することで、充電場所を増やす必要があると述べた。
ロシアにおける自動運転技術の現状について、大手会計事務所KPMGロシア・CISのワジム・トポロフ・コンサルティング副部長が導入環境に関する主要20カ国の比較結果を紹介した。それによると、ロシアは総合17位(1位オランダ、2位シンガポール、11位日本)。ロシアにはイノベーションを促進するインフラが存在し、政府が自動運転技術開発に対するインセンティブを提供しているものの、公道での無人運転試験に関する法制度の整備、ネット通信速度の高速化、自動車メーカーと技術開発企業との提携の促進が今後求められると述べた。
ロシアのグーグルとも呼ばれるヤンデックスのビャチェスラフ・ムラシキン研究グループ長によると、同社は既に自動運転車の走行実験を行っている。6月にはモスクワからカザンまで約780キロの幹線道路で実験を行った。運転中、座席には常時運転手がいたが、11時間の走行のうち99%は自動運転モードで走行することができたという。ムラシキン氏は「実現には何年もかかるとか、特別なインフラが必要などと言われるがいずれも幻想だ。われわれは悪天候下での実験も成功させており、現行のインフラでも十分安全に運転できている」「(実用化は)技術的にほぼ可能な段階にあり、あとは法整備が必要」と述べた。
(浅元薫哉)
(ロシア)
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