メイ首相がアフリカ歴訪、ブレグジット後も経済連携維持

(英国)

ロンドン発

2018年08月31日

テレーザ・メイ首相は8月28日から3日間の日程で南アフリカ共和国、ナイジェリア、ケニアの3カ国を歴訪した。英首相のサブサハラアフリカ(サハラ砂漠以南)訪問は2013年以来5年ぶりで、メイ首相は2016年7月の首相就任後初めて。3カ国はいずれも、英国と旧植民地など53カ国・地域で構成する英連邦の加盟国で、19あるアフリカの加盟国の中でGDPは1~3位を占める。

歴訪には複数の閣外相らに加え、ロンドン証券取引所、建機製造大手JCB、スコッチ・ウイスキー協会など民間部門から代表者29人が同行。ビッグデータを用いてアフリカの零細農家を支援するロンドンのスタートアップ、ファーム・インクなども参加している。2019年に迫ったEU離脱(ブレグジット)を念頭に、経済関係の強化を主眼としている。

メイ首相は28日、最初に訪問した南アのケープタウンで、シリル・ラマポーザ大統領と会談。EUは南部アフリカ関税同盟(SACU、注)加盟国にモザンビークを加えた6カ国と経済連携協定(EPA)を締結している。ブレグジットに伴い英国は同EPAから離脱することとなるが、経済連携を維持する共同声明に、英国のジョージ・ホリングベリー貿易政策担当相と6カ国を代表してボツワナのボゴロ・ケネウェンド投資貿易産業相が署名した。英国がブレグジット後の経済連携維持に関する文書を取り交わしたのは初めて。ブレグジット後も積極的に自由貿易を促進していくという英国政府の取り組みを内外に示す狙いがあったとみられる。メイ首相はこのほか、向こう4年間で官民合わせて最大80億ポンド(約1兆1,600億円、1ポンド=約145円)規模のアフリカ向け投資を実行すると表明。アフリカ経済に対する意気込みを示した。

一方、今回の歴訪の時期を疑問視する声もある。英紙「フィナンシャル・タイムズ」(8月28日)は、フランスのエマニュエル・マクロン大統領が2017年5月の就任後、9回にわたりアフリカ11カ国を訪問したことや、中国の習近平国家主席が2013年3月の就任後初の外遊先にロシアとアフリカを選んだことなどを指摘。他国との競争の中で影響力を発揮するには遅過ぎたとの見方を報じている。

メイ首相は29日にナイジェリア、30日にはケニアを訪問。引き続き経済外交に軸足を置きながら、難民問題や軍事協力などについても幅広く協議する。

(注)南ア、ナミビア、ボツワナ、レソト、エスワティニ(旧スワジランド)の5カ国からなる関税同盟。モザンビークを加えた6カ国は2016年6月にEUとのEPAに署名。SACU5カ国は2016年10月から、モザンビークは2018年2月から暫定適用を開始している。

(宮崎拓)

(英国)

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