JTがたばこ事業を買収、バングラデシュ史上最大のFDIに

(バングラデシュ)

ダッカ発

2018年08月09日

日本たばこ産業(JT)は8月6日、バングラデシュのたばこ市場シェア2位の地場アキジグループのたばこ事業を買収することを発表した。買収額は1,243億バングラデシュ・タカ(1,645億円)となる見込みだ。これまで、日系企業によるブラック ジャック 賭け 方直接投資(FDI)では、2008年にNTTドコモが地場通信事業者ロビ〔当時TM International(Bangladesh)〕に行った370億円の投資が最大だったが、今回はそれを大きく上回る。本件に関し、バングラデシュ投資開発庁(BIDA)のエム・カジ・イスラム長官はメディアの取材に、「民間セクターにおいてはバングラデシュ史上最大のFDIだ」と述べた。このM&Aが完了すれば、日本の対バングラデシュFDI残高は米国、英国に次いで3位となる。

現在、先進国を中心に、たばこ産業に対する規制が強化されており、市場規模は縮小傾向にある。そのため人口ボーナス期が続く新興市場でのシェア拡大は、JTにおける重要な成長戦略となっている。バングラデシュは年間860億本と世界8位の市場で、市場成長率も2%と他国に比べて高いのも魅力だ。JTは2015年からバングラデシュ市場に参入しているが、ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)が55%と圧倒的シェアを持ち、JTのプレゼンスは低い。過去にはトップシェアを誇っていたアキジグループも、BATの攻勢によりシェアは20%まで落ち込んだ。アキジグループは今後の成長と利益確保のため、JTの国際企業としての知見や技術力に期待する。

農村部での雇用の確保にも期待

バングラデシュ政府は近年、都市部以外の農村部の開発・所得向上に注力しており、JTはそうした政府の方針と足並みをそろえる。買収後はアキジグループで働く1万4,000人以上の従業員の雇用を維持し、新たな雇用の創出、さらに、たばこ農家の所得向上も目指す。バングラデシュ中央銀行のカビール総裁は、この点を高く評価し、JTによる投資を歓迎する意向を示していた。BIDAのエム・カジ・イスラム長官は「この投資が成功すれば、輸出にも寄与し、少なくとも1億ドルの外貨が獲得できるだろう」とし、輸出産業としてのたばこ産業にも期待を込めた。

規制強化への対応が重要

しかし、バングラデシュにおいても、たばこ産業に対する規制は行われている。BATの年次報告によれば、売上高2,041億タカのうち1,521億タカは補足税や付加価値税(VAT)に該当する。また、法人税は一般法人の35%に対して、たばこ産業に従事する企業は45%と高額で、BATの最終利益は売上高の約4%の78億タカだ。JTの成功のカギは、首位を独走するBATの牙城をどう攻略するかだけでなく、年々強化される規制・徴税体制にいかに対応していくかという点も重要となるだろう。

(古賀大幹)

(バングラデシュ)

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