英国企業のブレグジットに対する悲観論は限定的
(英国)
ロンドン発
2018年08月13日
英国のEU離脱(ブレグジット)をめぐり、7月下旬以降、「合意なき離脱(ノー・ディール)」の可能性とその深刻な影響が頻繁に取り沙汰される一方、企業経営者の間では悲観論はそれほど広がっていない。
「フィナンシャル・タイムズ」紙と経済団体ICSAが8月に発表した調査結果によると、ブレグジットが自社に「悪い影響を与える」と回答した企業は42%で、ブレグジットを決めた2016年6月23日の国民投票以降の4回の調査では最も少なかった(図1参照)。逆に、「影響はない」とした企業は58%で、過去4回で最も多かった。
本調査は、ロンドン証券取引所の主要株式指標の1つFTSE350の構成銘柄となる企業の幹部を対象に年2回実施されているもので、今回発表された調査は2018年6月に実施された。ノー・ディールが盛んに言及され始める前の調査だが、その後、情勢が大幅に悪化したわけでもない。向こう1年間の英国経済の見通しに関する質問でも、「悪くなる」との回答は55%で、1年前の調査の69%から大幅に減少した(図2参照)。「変わらない」は31%、「良くなる」は6%で、いずれも1年前より好転している。もっとも、「良くなる」は過去4回とも一貫して1桁台にとどまっており、さらに半年前の8%からは減少しているため、厳しい見通しが続いているのは確かだが、ブレグジットに伴う悲観論の拡大はうかがえない。
「自社が直面している重大なリスクにブレグジットは含まれるか」との質問には、39%が「含まれる」、61%が「含まれない」と回答。後者のうち33%はブレグジットが「リスクではない」としている一方で、65%は「リスクではあるが、重大なものではない」と答えている。この結果についてICSAは、調査対象が大手企業であることも1つの要因としている。これら大手企業の多くは英国外でも事業を展開しているため、英国市場における負の影響は限られる企業も少なくないためだ。
英国経営者協会(IoD)が8月3日に公表した英国企業800社を対象としたアンケート調査でも、ブレグジットに対して何らかのコンティンジェンシープラン(緊急時対応計画)を実行したと回答した企業は3分の1以下にとどまる。また、49%の企業は同プランを用意するつもりがないとしており、さらにそのうちの49%はブレグジットが自社に与える影響はないと答えている。
(宮崎拓)
(英国)
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