鉄鋼大手、上半期は業績好調も先行きに不安
(ロシア)
欧州ロシアCIS課
2018年08月20日
大手鉄鋼メーカー各社の2018年上半期の業績(国際会計基準)が出そろい、軒並み好調な決算となった(表1、2参照)。業界最大手のエブラズは純利益額を前年同期の5,300万ドルから11億1,200万ドルと20倍超に伸ばした。投資銀行VTBキャピタルのアナリスト、ボリス・シニツィン氏は大幅増益の理由として、鉄鋼と主力製品のバナジウムの価格上昇、前年同期に計上された非現金項目の損失がなかったことを挙げている。
その一方で、下半期には業績の減速が予想される。大型インフラ案件では、上半期にはヤマル液化天然ガス(LNG)プラントやクリミア大橋自動車道、FIFAワールドカップのスタジアムなどの大型建設事業が完了。下半期は需要の先細りが懸念されている。鉄鋼業界は5月にプーチン大統領が発表した政策目標(関連ブラック ジャック 確率)にある輸送インフラ整備になど期待する。
3月に米国が鉄鋼製品に高額の輸入関税を課し、世界的に行き場を失った鉄鋼製品に余剰が生じていることも不安要素だ。中国、韓国、ウクライナ製のだぶついた鉄鋼製品がロシアを含むユーラシア経済連合(EEU)市場に流入しかねない状況を懸念したロシア鉄鋼大手3社〔ノボリペツク製鉄所(NLMK)、マグニトゴルスク製鉄所(MMK)、セベルスタリ〕は8月7日、EEUに対し熱間圧延製品、冷間圧延製品、被覆圧延製品の流入阻止を目的とした調査実施を要請した。
加えて業界の先行きを不透明にしているのが、政府による特定産業の「余剰収入」(注)の徴収の問題だ。アンドレイ・ベロウソフ大統領補佐官は7月、政府の政策実施予算を確保すべく、鉄鋼、鉱物資源採掘、化学、石油化学の大手14企業から、2017年に発生した余剰収入5,136億6,000万ルーブル(約8,732億円、1ルーブル=約1.7円)超の徴収をプーチン大統領に提言(「RBK」紙電子版8月9日)、政府内で採用の可否につき検討が進められている。大企業を中心とした有力経営者団体・ロシア産業企業家連盟(RSPP)のアレクサンドル・ショーヒン会長は、地域経済やロシアの投資環境へ悪影響を及ぼすとして反対姿勢を明確にしている。
(注)為替差益や資源価格の上振れなど、企業活動に直接起因しない原因で得た収入を想定している(「RBK」8月9日)。
(市谷恵子、高橋淳)
(ロシア)
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