EU市民の労働者が第2四半期は過去最大の減少、非EUは増加
(英国)
ロンドン発
2018年08月23日
国民統計局(ONS)は8月14日、2018年第2四半期の労働市場の統計を発表した。英国で就労するEU市民は22万7,900人と、前年同期比で8万6,000人減少し1997年の統計開始以来最大の減少となった(添付資料参照)。
ONSによると、2004年にEUに加盟した中・東欧8カ国(チェコ、エストニア、ハンガリー、ラトビア、リトアニア、ポーランド、スロバキア、スロベニア)の国籍の就労者が前年同期比で11万7,000人減少し88万人となった。また、2004年以前からのEU加盟国国籍の就労者も2万3,000人減少し99万7,000人となった。一方、2007年にEUに加盟したブルガリアとルーマニア国籍の労働者は5万4,000人増の39万1,000人となった。「タイムズ」紙(2018年8月15日)は、EU離脱(ブレグジット)と好ましくない為替レート(ポンド安)によりポーランド国民にとって英国は魅力的でなくなりつつある、とするアルカディ・ジェゴツキ駐英ポーランド大使のコメントを引用しつつ、「現在の不確実性と移住による家族の分離という精神的な負担から、一部のポーランド人はポーランドに戻る決断をし、また英国に移住することを保留にしている」と述べたと報じている。
他方、2007年以降横ばいだった非EU市民の労働者は前年同期比で7万4,000人増の127万人となった。特にインド国籍(5万人増)、オーストラリアおよびニュージーランド国籍(2万2,000人増)、米国籍(1万7,000人増)の就業者が増加した。
失業率は4.0%に改善、過去43年で最低
第2四半期の失業率(季節調整済み)は前期から0.2ポイント改善し4.0%と過去43年で最も低かった。労働市場の緩みがなくなり、人手不足が進む中、EU市民は労働力供給源として貴重だ。EU市民を多く雇用するある在英日系企業は、雇用状況は厳しくなっており、EU市民の従業員の帰国による離職や新規雇用が困難になることにより人件費が上昇し、経営に打撃になると懸念を示している。
英国産業連盟(CBI)のマシュー・パーシバル雇用担当部長は、「政府はEU市民の労働者が(ブレグジット交渉が)ノー・ディール(合意なき離脱)のシナリオであっても働き続けることができることを保証する必要がある」と述べ、企業がEUの人材にアクセスできることの重要性を強調した。
(鵜澤聡)
(英国)
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