税関申告、8月から新システムに段階的に移行
(英国)
ロンドン発
2018年07月31日
歳入関税庁(HMRC)は8月から新しい税関申告システムである「税関申告サービス(CDS)」を段階的に導入する。現在、EU域外国との輸出入取引に使われている通関処理システム(CHIEF)に代わるもので、8月には一部の輸入申告を対象に(対象企業にはHMRCから連絡)、11月には全輸入申告、2019年1月からは全輸出申告を対象とし、CDSに完全移行する予定だ。それまではCHIEFが並行して使用される。
輸出入企業や通関手続き代行業者はCDSに対応したソフトウエアを使い、システムにアクセスする。CDSは、CHIEFが担っていた(1)輸出入申告、(2)関税など課税額の算出と賦課、(3)通関ブラック ジャック ディーラーを電子的に処理する役割を受け継ぐ。さらにCHIEFが対応できていなかった世界税関機構(WCO)コードや欧州連合関税法典(UCC、2016年5月導入)に対応するほか、輸出入履歴の表示、関税の確認、認定事業者(AEO)申請、手続き簡素化申請、関税非課税申告の確認など、一連の新規および既存のサービスが一元的に受けられる。WCOコードやUCCに対応するため、申告には新たに(1)港および地名、(2)倉庫タイプ、(3)品目税目、(4)数量(ISO)、(5)通関手続きコードなどのブラック ジャック ディーラーが求められる。
CDSへの移行は、1994年導入のCHIEFが老朽化しWCOやUCCに対応できなかったことから、EU離脱国民投票前の2013/2014年度に決定されたが、EU離脱目前の時期の移行には懸念の声が上がっている。CHIEFの利用企業数(2017年)は約15万社、通関申告数は5,500万件だが、EU離脱後はEU域内取引だけを行ってきた企業も対象となることから、利用企業数と税関申告数は29万5,000社、2億5,500万件に拡大すると見積もられている。
これに対しHMRCは、処理能力の高いCDSに移行することで離脱後の申告数の増大にも対応可能であり、緊急時にはCHIEFをバックアップシステムとして使うと説明している。また、ITサービス各社などと試験を繰り返してきたほか、CHIEの利用実績のある25万8,000人とメールアドレスを入手した9万9,000人に2~3月に説明のメールを送付し、関係者に準備を促してきたとしている。しかし、英国会計検査院(NAO)は6月28日に発表した報告書の中で、CDSプログラムにはさらに技術的あるいはビジネス面での課題が残っており、2019年1月からの完全移行ができない可能性があると指摘している。
(岩井晴美)
(英国)
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