欧州委、2018年のEU・ユーロ圏の成長率を下方修正
(EU)
ブリュッセル発
2018年07月13日
欧州委員会は7月12日、夏季経済予測(中間見通し)にてEU加盟28カ国とユーロ圏の2018年の実質GDP成長率はともに2.1%と発表、5月の春季経済予測()から0.2ポイント下方修正した。欧州委は、この背景として「激化する貿易摩擦」「原油価格上昇」「EU加盟国での政治的不透明性」を挙げた。
原油価格上昇や米国との貿易摩擦が念頭に
欧州委はEU28カ国、ユーロ圏の経済ファンダメンタルズについて「底堅く」「力強い成長を持続する」との現状認識を変えていないが、2018年春から続いている原油価格上昇(インフレ懸念)や、米国との貿易摩擦などを念頭に、成長率見通しを下方修正した。特に貿易摩擦について、欧州委は「今回の予測にさらなる事態緊迫は織り込んでおらず、摩擦が一段と激化すれば、関係国全ての貿易・投資に悪影響を及ぼし、経済も停滞する」との認識を示し、今後の「ダウンサイド・リスク(今回の予測のさらなる下振れ懸念)」の可能性を示唆した。
このほか、ブレグジット問題について、欧州委は「(離脱後も移行期間中となる)2019年の見通しについては、EU27カ国と英国との通商関係が現状維持されることが前提にある」と言及するにとどめた。ただし、欧州委はEU28カ国の国別予測で、英国の成長率について2018年は前回予測から0.2ポイント下げイタリアと同率の1.3%(EU28で最低)、2019年はEU28でイタリア(1.1%)の次に低い1.2%と厳しい見通しを示している。
なお、欧州委のバルディス・ドムブロフスキス副委員長(ユーロ・社会的対話、金融安定・金融サービス・資本市場同盟担当)は今回の経済予測下方修正の背景について、「高まる米国との貿易摩擦などの好ましくない外部環境が経済に対する信頼感を損ない、経済成長に打撃をもたらし得るということだ」と指摘した。また、ピエール・モスコビシ委員(経済金融問題・税制・関税同盟担当)は「保護主義的な通商政策の過熱は経済停滞の明らかなリスク要素だ。貿易戦争に勝者はなく、犠牲者を生み出すだけだ」と警鐘を鳴らした。
(前田篤穂)
(EU)
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