関税や付加価値税の改正案発表、国内製造業を保護・育成へ
(ケニア)
ナイロビ発
2018年06月27日
ケニアのロティチ財務長官は6月14日、2018/2019年度(2018年7月~2019年6月)の予算方針演説で、政府の重要経済政策である「4つの項目(Big Four)」(注1)の達成や国内製造業の保護・育成を目的とした税制改正案を発表した。
ロティチ長官は、国内製造業の保護のため、鉄鋼製品、紙製品、建材、食用油、古着・中古の靴や履物の輸入に対する関税引き上げを発表した(表参照)。一方で、動物飼料や殺虫剤の生産のための原料、タブレット端末や調理用ストーブの部品に対して付加価値税(VAT)や輸入関税を非課税にするとした。また、オフピーク時の電力料金を半額にするほか、企業利益から電力料金の30%を控除できるよう所得税法(Income Tax Act)を修正するとした。ケニア製造業協会(KAM)は、地場製造業の競争力を高めるとして歓迎している。また、ケニアが加盟する東アフリカ共同体(EAC)の対外共通関税(注2)を包括的に見直す予定とした。
同長官は、手頃な住宅の開発を支援する国家社会住宅開発基金(NHDF)設立を提案し、その原資として、雇用法(Employment Act)を改正し、労働者の月額給与総額の0.5%〔最大5,000ケニア・シリング(約5,500円、Ksh、1Ksh=約1.1円)〕、雇用者から同額を徴収すると発表した。
モバイルマネー送金手数料にかかる物品税を現行の10%から12%に引き上げるほか、金融機関を通じた50万Ksh以上の全ての送金に対し新たに0.05%の物品税を課すと提案した。新たな課税による収入は、ユニバーサルヘルスカバレッジの実施に充てられる予定だ。また、灯油(1リットル)当たりの物品税を現行の7.205Kshから10.305Kshに引き上げるとした。ガソリンに灯油を混ぜて販売するディーラーがいるため、灯油の価格を引き上げて悪徳行為を抑止したい意向だ。
物品税法(Excise Tax Law)で定められているケニア歳入庁(KRA)長官による物品税のインフレ率勘案条項を2年に1回から1年に1回への変更を提案しており、同法案が議会で可決された場合、ビール、たばこ、二輪車、ボトルウォーター、ワイン、石油製品などの物品税が毎年のインフレ率に応じて変動する可能性がある。
財務省は当初、所得税法の改正を提案し、月額75万Ksh以上の所得に対して35%の課税帯を導入する予定だったが、公開審議を経て同提案を撤廃した。
一連の税制改正案は、8月に予定されている議会の審議・承認を経て成立する見込みだ。
(注1)1.製造業の振興、2.食糧安全保障、3.ユニバーサルヘルスケア、4.手頃な住宅の供給。
(注2)東アフリカ共同体(EAC)の対外共通関税は次のとおり。
- 原材料、資本財、農業用資材、特定の医薬品、医療機器:0%
- 中間財でその後の生産に使用されるもの:10%
- 最終財:25%
(島川博行)
(ケニア)
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