親EUで実務派のサンチェス内閣が発足

(スペイン)

マドリード発

2018年06月11日

内閣不信任案の可決により政権を獲得した、ペドロ・サンチェス首相が率いる中道左派・社会労働党(PSOE)新政権が6月7日に発足した。

閣僚18人のうち11人を女性が占める

サンチェス首相は、ジェンダーや社会における平等促進をあらゆる政策の礎に据えるとし、スペイン初の女性過半数内閣を組閣した(表参照)。首相を含めた閣僚18人中、副首相や報道官、国防、法務、財務、経済などの11ポストを女性が占め、女性比率でフランスや北欧諸国を上回る世界トップ水準となった。

表 サンチェス内閣の顔ぶれ

また、「親EU」を強く打ち出し、外相に元欧州議会議長で閣僚経験も豊富なジョセップ・ボレル氏、経済相には欧州委員会予算総局長のナディア・カルビーニョ氏を起用。急進左派のポデモス党など他党からの入閣はなく、非議員が3分の1を占める実務派政権となった。イタリアのポピュリズム政権と一線を画し、財政安定を柱とした経済政策スタンスを金融市場にアピールすることが狙い。予想外の手堅い人選は好意的に受け止められている。

エネルギーや雇用政策で大きな方向転換

政権交代に伴う省庁改編では、前政権の1府・13省から1府・17省に増加した。科学・イノベーションや産業分野の官庁復活などの改編が行われ、最大の特徴は「環境移行省」の創設だ。従来の農業・漁業・食料・環境省とエネルギー・観光・デジタル化省から、環境とエネルギー行政を切り離して統合し、気候変動の国際交渉に長年関わってきた元環境・気候変動長官のテレサ・リベラ氏を大臣に任命した。EUレベルで2030年に向けたエネルギー移行や循環経済分野の政策枠組みが始動しつつある中、同省の設置により再生可能エネルギーや資源利用の目標は大幅に引き上げられることになりそうだ。

従来の雇用・社会保障省は、労働・移民・社会保障省に名称を変更した。年金制度維持のための持続可能な労働市場政策に重点を置く。社会労働党は、前政権が実施した労働市場改革のうち、解雇補償金の引き下げや労働協約の弱体化などは不安定な雇用を増やすものだとし、一部廃止を主張している。

その一方で、少数単独政権の道を選んだサンチェス政権にとって、上記のような重要法案を議会で通すことは困難とみられている。

(伊藤裕規子)

(スペイン)

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