モロッコ国営リン公社貨物、1年ぶりに返却

(モロッコ、南アフリカ共和国)

ラバト発

2018年05月21日

西サハラでリン鉱石を不正に取得したとして、南アフリカ共和国で競売に掛けられていたモロッコ国営リン公社(OCP)の貨物が5月7日、1年ぶりに返却された。

西サハラのブーカラー地方で採掘された5万5,000トンのリン鉱石を積んだOCPの貨物船は2017年5月、ニュージーランドへの航路の途中で南アに寄港した際、同国の裁判所によって差し押さえられた。

その背景には、西サハラの独立国家樹立を主張しモロッコと領有権争いをしているポリサリオ戦線が、南アの裁判所へモロッコによる西サハラでのリン鉱石不正採掘を訴え、これを支持する裁判所が差し押さえの措置を取った。

2018年2月、裁判所は不正採掘が国際法および国内法に抵触するとして貨物の売却を決定し、売却額の半分はポリサリオ戦線が受け取るとした。しかし、買い手がつかず個別売買および競売が不成立に終わったため、OCPに返却された。なお、2017年6月にはパナマでポリサリオ戦線がOCPの貨物船に対し同様の訴えを起こしたが、同国の裁判所は証拠不十分を理由に訴えを棄却している。

南アは2004年に西サハラを国家承認し、これに反発したモロッコが駐南ア大使を召還するなど一時期両国関係は冷え込んだが、その後、南アはモロッコとの外交関係改善に取り組んでいた。

(井上尚貴)

(モロッコ、南アフリカ共和国)

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