NAFTA原産地規則見直し案は域内自動車市場縮小の可能性
(米国、メキシコ、カナダ)
ニューヨーク発
2018年05月08日
自動車調査を専門とする非営利団体のセンター・フォー・オートモーティブ・リサーチ(CAR)は4月26日、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉に関して米国側が提案している自動車の原産地規則の見直し案は、米国内の自動車販売や輸出の減少につながる可能性があるとの調査結果を発表した。
CARによる今回の調査は、「現在議論されている見直し案を再確認し、北米全体の自動車業界に与える潜在的な影響を検証する」ことを目的に行われた(注1)。報告書では、NAFTA原産地規則に関して米国が提唱する見直し案のうち、(1)完成車や主要部品(注2)のNAFTA域内における現地調達率を62.5%から75%(金額ベース)に引き上げた場合、(2)完成車の30%以上の部品を生産国の平均賃金が自動車製造業の域内中央値(時給15~16ドル)以上の国で生産した場合、について検証を行っている。
CARによると、上記の2つの要件が加えられた場合、新たにNAFTAによる特恵税率の適用外となるカナダとメキシコからの輸入台数は、米国の全販売台数の13~24%に上ると試算している。また、NAFTAの適用外となる輸入車に課せられる最恵国(MFN)関税(乗用車が2.5%、トラックが25%)の合計は21億~38億ドルになるとしている。仮に自動車メーカーが追加コスト分を車両販売価格に転嫁した場合、販売価格は1台当たり470~2,200ドル上昇するとともに、国内の年間販売台数は6万~15万台減少すると指摘している。
また、米国からの輸出のうち、NAFTA適用外となる自動車には、カナダ向けで6.1%、メキシコ向けで20%のMFN関税が課せられることになり、両国内での販売価格上昇を通じて、輸出台数の減少につながる可能性も述べている。
さらに報告書では、メキシコの自動車業界の平均賃金(時給3.41~7.34ドル)が域内中央値に達していないことから、メキシコで生産された部品を多く利用している自動車は上記(2)の要件を満たせずにNAFTAの適用外となり、その結果、よりコストの安い地域の部品に代替されるとともに、米国産部品の含有率も減少する可能性を指摘している。一方、仮にメキシコでの急激な賃上げが行われた場合、雇用の減少や、それに伴う自動車市場の縮小につながる可能性にも言及している。
(注1)本調査は、自由貿易を推進する産業・組織の資金により設立された非営利団体のトレード・リーダーシップ・コアリションから委託を受け、実施された。
(注2)主要部品は、エンジン、変速機、車体、車軸、ステアリング、サスペンションシステム、バッテリーを指す。
(大原典子)
(米国、メキシコ、カナダ)
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