日・中社会保障協定に署名
(中国、日本)
北京発、中国北アジア課
2018年05月11日
河野太郎外相と中国の王毅国務委員兼外相は5月9日、「社会保障に関する日本国政府と中華人民共和国政府との間の協定」(日・中社会保障協定)に署名した。
現在、日中両国からそれぞれの相手国に派遣される企業駐在員などについて、日中双方の年金制度に二重に加入を義務付けられる問題が生じている。中国に進出した日本企業で構成する中国日本商会の「中国経済と日本企業2017年白書」の建議でも社会保険料の二重払いが日系企業の大きな負担となっているとし、早期の協定締結を求める声が上がっていた。
同協定が適用される法令の範囲は、中国については「被用者基本老齢保険(中国語名:職工基本養老保険)」に関する法令、日本については、「国民年金(国民年金基金を除く)」「厚生年金保険(厚生年金基金を除く)」に関する法令と定められた(注)。
発効すれば年金制度の二重加入問題が解消
外務省の発表によると、同協定が効力を生ずれば、派遣期間が5年以内の一時派遣被用者は、原則として、派遣元国の年金制度にのみ加入することとなり、二重に加入を義務付けられる問題が解消されるとしている。
なお、日本が同協定を締結するためには、国会の承認を得る必要がある。さらに、協定文によると、同協定が効力を生ずるためには、日中双方が国内法上の手続きの完了を通知する外交上の公文を交換する必要があり、実際の発効は、公文が交換された月の後、4カ月目の月の初日となることが定められていることから、発効までには数カ月以上の時間がかかると見込まれる。
また、同協定の効力発生前から相手国に派遣されている企業駐在員などについては、派遣期間は、同協定の効力発生の日に開始したものと見なすと定められた。
(注)協定文においては、「ただし、同協定の適用上、国民年金には、老齢福祉年金その他の福祉的目的のため経過的又は補完的に支給される年金であって、専らまたは主として国庫を財源として支給されるものを含めない」と定められている。
(藤原智生、小宮昇平)
(中国、日本)
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