最低賃金を2年連続で引き上げ

(ケニア)

ナイロビ発、中東アフリカ課

2018年05月10日

ケニア政府は5月1日、法定最低賃金を前年比で5.0%引き上げると発表した。2017年の18.0%に続き、2年連続の引き上げとなった(表1参照)。法律が改正され、公示が発表された後に有効となる。ウフル・ケニヤッタ大統領は労働者福祉の改善のため最近の物価上昇率を勘案して、今回の引き上げを判断した。

ケニア国家統計局(KNBS)によると、2016年、2017年のインフレ率はそれぞれ6.3%、8.0%で推移しており、2018年に入ってからも4.8%のインフレ率を記録している。

表1 2009年以降の法定最低賃金引き上げ率と物価上昇率

ナイロビ市内で開催されたメーデー式典で、労働・社会保障省のウクル・ヤッタニ長官は大統領のメッセージを代読し、最低賃金の引き上げのほか、政権の取り組みとして、(1)労働基準監督官の増員、(2)サウジアラビアなど中東諸国との労働者派遣協定の締結、(3)労働争議解決メカニズムの構築、(4)大学卒業生のための国家インターンシッププログラムの充実、などを実施すると述べた。

KNBSによると、2017年の雇用者数の増加率は、フォーマルセクターが前年比4.1%でインフォーマルセクターの5.9%を下回っており、政権にとって最低賃金の引き上げのみならず、フォーマルセクターの雇用創出も重要となる。

同じく式典に出席した労働組合中央団体(COTU)のフランシス・アトウォリ議長はあいさつの中で、今回の賃上げを評価しつつも、前年度の18%の賃上げや低所得者向けの賞与と残業代の非課税措置は多くの企業で実行されていないと苦言を呈した。一方で経営者側であるケニア製造業協会(KAM)やケニア雇用者連盟は、ケニア企業の競争力が低下し雇用が失われるとして反発している。KAMのフィリス・ワキアガ会長は、政府には付加価値税(VAT)削減などによる生活コストの低減を期待するとの声明を発表した。

ケニアの法定最低賃金は、農業分野は10職種、その他の分野は12職種(職工はさらに4段階に分類)・3地域分類ごとに定められている。今回の賃上げによって、ナイロビ・モンバサ・キスムの3都市では、法定最低賃金が最も低い清掃作業員などの職種では、これまでの月額1万2,927ケニア・シリング(約1万2,927円、Ksh、1Ksh=約1.0円)から1万3,573Kshになる。最も賃金が高い大型車のドライバーなどは2万9,169Kshから3万628Kshになる。

表2 2018年ケニア主要都市別職業別最低賃金

(島川博行、小松崎宏之)

(ケニア)

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