GSTに代わる財源確保が焦点

(マレーシア)

クアラルンプール発

2018年05月22日

マレーシア財務省は5月16日、物品・サービス税(GST)の税率を6月1日から0%に引き下げると発表、さらに5月17日には、GST以前に導入されていた売上税およびサービス税(総称してSST)を再導入する意向を表明した。SSTについては再導入時期などの詳細は不明だが、いずれにせよGSTに代わる歳入源の確保が、焦点となりそうだ。

税収の約2割を占めるGST

GSTは2015年4月1日の導入以降、政府の税収の約2割を占め、主要な歳入源となっていた。2017年10月に財務省が発表した「経済レポート(2017/2018)」によると、GSTによる税収の推定額は438億リンギ(約1兆2,264億円、1リンギ=約28円)とされている。他方、SSTの2014年の税収は172億リンギで、SSTに移行した場合、単純計算で約270億リンギの税収が減ることになる。

GSTの事実上の廃止については、プラス面として国民負担の軽減および購買力の活性化、マイナス面として税収減による財政赤字の拡大と、それに伴う投資縮小や経済成長の低迷が挙げられる。米国の格付け会社ムーディーズは、「GSTに代わる財源の確保が適切に行われなければ、信用格付けがネガティブに変更される恐れがある」と警鐘を鳴らす(「スター」紙5月17日)。

政府は財政改革やガバナンス向上で対応

こうした懸念について財務省は、「無駄を省いた効果的な歳出計画および合理化を図り、歳出を削減することで対応していく」としている。マハティール首相は、閣僚ポスト数の削減や政治任用制度により雇用していた1万7,000人の政府系職員を解雇する意向も示している。

さらに、主要財源である原油の価格は、2018年予算の試算時では1バレル当たり52ドルだったが、現在は70ドル程度に回復しており、石油関連歳入の増加が見込まれる。前政権下において、オスマン・アジズ元財務副大臣は「1バレル当たりの原油価格が1ドル上昇した場合、政府の石油関連歳入は300万リンギ増える」と発言している(「エッジ」紙4月4日)。財務省としても、当面は財政赤字拡大の懸念は払拭(ふっしょく)できると考えているようだ。

他方、GSTを廃止するとなると議会承認が必要だ。政府が設置した特別評議会のメンバーの1人であるゼティ・アジズ元中央銀行総裁は5月15日、「GSTの廃止方針は100日以内に発表する」と述べており、今後のGST廃止の具体的なスケジュールは8月中旬ごろの発表になるとみられる。

(田中麻理)

(マレーシア)

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