英下院委、EU離脱後もEMAへの継続参加を提言

(英国)

ロンドン発

2018年05月24日

英国下院のビジネス・エネルギー・産業戦略委員会は5月17日、EU離脱が医薬品産業に与える影響に関する報告書を公表した。

報告書は、英国がEUと合意なく離脱した場合の影響を関税と非関税の両面で分析した。関税分野では、WTOの医薬品に関する多国間合意によりゼロ関税の品目が大半なため影響は軽微としつつ、WTO関税撤廃対象品目リストへの新しい薬品や成分の追加・更新が遅れている現状を指摘した。

世界をリードする現在の立場を維持するには、現在のWTOルールで対象となっていない品目をカバーする貿易協定をEUおよび他の貿易相手国と締結すべきであると同時に、WTOの医薬品に関する多国間合意の対象品目が更新されることを国際的に働き掛けていくべきだと提言している。

非関税分野については、煩雑な通関手続きが生産性の低下や投資阻害要因になりかねないとし、摩擦のない国境を可能な限り探求するよう求めている。

最大の懸念はEU・英国間の規制の相違と二重申請

同報告書では最大の懸念として、離脱後の欧州医薬品庁(EMA)と英国医薬品・医療製品規制庁(MHRA)との規制内容の相違、両方に別々に申請を必要とすることになる経済的デメリットを挙げている。EMAとMHRAに対して二重に手続きを行う場合、1つの新薬の販売承認を得る度に4万5,000ポンド(約671万円、1ポンド=約149円)の追加費用がかかると試算した。さらに、EUでの薬事申請に不可欠な「資格要件を満たした人材(QP)」不足などの課題を提示し、英国がEMAに引き続き会員として参加し続けられるよう交渉することを政府に要求している。

テレーザ・メイ首相は3月2日、製薬分野でEUの規制機関に準メンバーとしてとどまる選択肢を提示(2018年3月5日記事参照)しつつ、企業の紛争解決についてはEU司法裁判所(CJEU)ではなく英国内の裁判所での解決を希望することを演説で述べた。これについて、製薬企業が規制調和に沿った単一の紛争解決メカニズムを求めていることから、医薬品分野においてCJEUが継続的に果たし得る役割に対しては、より現実的なアプローチを続けるよう政府に要望している。また、貿易障壁や規制の重複は全て、医薬品価格の高騰を招き、医薬品のアクセスを妨げるリスクとなるとし、医薬品産業の成功と患者の利益のために市場と医薬品への継続的なアクセスを保証するEUおよびその他のパートナーとの合意を追求するよう政府に要請している。

(岩井晴美)

(英国)

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