欧州委、イラン核合意をめぐる米国の動きに警戒感示す

(EU、イラン、米国)

ブリュッセル発

2018年05月10日

EUのフェデリカ・モゲリーニ外務・安全保障政策上級代表(欧州委員会副委員長兼務)は5月8日、米国のイラン核合意からの離脱表明を受け、EUとしては、これまでの合意の枠組みにとどまり、完全な実施を継続する考えを明らかにした。モゲリーニ外務・安全保障政策上級代表は「イラン核合意は2国間合意ではなく、特定国が一方的に破棄できるものではない」との認識を示し、ドナルド・トランプ大統領の離脱表明に疑念を呈した。

国際的核不拡散戦略の視点での重要性を強調

また、モゲリーニ外務・安全保障政策上級代表は、米国が新たな経済制裁を始めることに警戒感を示し、「EUはその安全保障政策に整合するかたちで、かつ、これまでの投資など経済的権益を守るために行動することになる」と語った。イラン核合意について、EUは国際的な核不拡散戦略の重要な要素としており、同上級代表は朝鮮半島の非核化の観点からも重要な意義があることを強調。長年の国際外交が成し遂げた功績であり、いかなる人物によっても(イラン核合意の枠組みを)解体させてはならないと声明を結んだ。

なお、EUは5月9日付のプレスリリースでも、この問題をめぐる声明を出し、米国の離脱表明について「大変遺憾」と正式に発表している。イラン核合意は「国連安全保障理事会決議第2231号」に基づくものである上、現在までイランが適切に合意を履行してきたことは、これまでの同国における検証および監視に関する国際原子力機関(IAEA)・事務局長報告からも確認されているとしている。

(前田篤穂)

(EU、イラン、米国)

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