オーストリアのリンツ市で欧州初のEV消防車開発
(オーストリア)
ウィーン発
2018年04月18日
オーストリア第3の都市リンツ(人口20万)は、2009年から市内交通の電化に力を入れ、現時点で市内の公共交通機関の73%が電化されている。また、2017年からはプラグインハイブリッドのごみ収集車を導入、EV用の充電設備は市内100カ所に設けられている。
リンツの公益事業会社(Linz AG)は4月4日、欧州初となる電動の小型消防車を発表した。地元の消防技術大手のローゼンバウアーと電池技術のクライセル・エレクトリックが開発し、EV消防車の価格は23万5,000ユーロ、ディーゼルエンジンモデルと比べて、電気モーターを採用することでかかる追加費用は約10万ユーロだ。
長距離走行不要の消防車はEV化に適す
EV消防車のベースはベンツの小型トラック「スプリンター」で、クライセル・エレクトリック製の総容量86キロワット時の電池4台で120キロワットのモーターを駆動する。消防士6人を乗せた航続距離は160キロで、急速充電器により電池容量の90%を80分で充電可能だ。長距離走行の必要はなくかつ待機時間に充電できる消防車はEV化に適しているという。想定される年間走行距離1万2,000キロで、ディーゼル車よりも走行コストは安く、二酸化炭素の排出は4.8トン削減できる。
地元企業が開発
今回の開発に携わった2社は、いずれもリンツを州都とするオーバーエステライヒ州の企業だ。ローゼンバウアーは17カ国で計3,400人を雇用する。超大型の空港用消防車を得意とし、日本を含む世界の約150カ国で使用されている。
一方のクライセル・エレクトリックは2014年設立で、高性能バッテリー開発を行うオーストリアの有力スタートアップ企業だ。2017年に新築された本社ビルには研究所、試作工場と量産工場を備える。2017年9月の新本社のオープニングには、オーストリアのケルン首相(当時)とともに同国出身の俳優アーノルド・シュワルツェネッガー氏が登場、クライセル・エレクトリックが同氏の依頼を受けEV化したゼネラルモーターズ(GM)の大型スポーツ用多目的車(SUV)「ハマー」を披露した。同社は、2015年にポルシェ「911」をEV化したことで国際的に注目された。
(エッカート・デアシュミット)
(オーストリア)
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