エルシーシ大統領が再選、2期目へ

(エジプト)

カイロ発

2018年04月05日

3月26~28日に行われた大統領選挙で、エルシーシ前大統領(注)が圧勝し再選された。対立候補者の相次ぐ辞退や一部の有権者からの批判がある中、2期目の政治運営についてどのような舵取りをするのか、注目されている。

1期目の実績に評価

4月2日、エルシーシ大統領の2期目就任が決定した。カイロ市内は選挙結果を祝うパレードが行われ、夜速くまでにぎわいを見せた。

2011年のアラブの春、2013年のモルシ政権の崩壊と10年に満たない間で2回の政変が発生した中、政権の立て直しに名乗り出たのがエルシーシ大統領だった。国家の安全と安定に力を入れ、成果を出さない閣僚は交代させるなど、国内改革に力を注いだ。カイロ中心部の治安は安定し、シナイ半島やリビア国境警備にも注力している。ニューカイロなどの新都市構想、エネルギー関連プロジェクトなども進行中だ。外交に目を向けても積極的に活動し、サウジアラビア、トルコ、米国、ドイツ、フランス、イタリア、ロシアなどとの関係強化を図っている。地域においても東アフリカ諸国を中心とした交流も活発で、各国との外交にも力を入れる。こうした実績は国際機関からも評価され、IMFや世界銀行は多額の融資を実行し、IMFは2017年11月にカイロに事務所を設置して、経済改革プログラムに関与している。このような状況をもたらしたエルシーシ大統領の功績は大きく、投票した国民から一定の信頼を得ている。

市民向け医療や住宅の充実、中小企業振興に期待

しかし、国民からは独裁政権による強権政治を懸念する声や、低所得者層向けのサポートプログラムの構築を期待する声が絶えない。現地ビジネス関係者へのヒアリングでは、今後の新政権への期待として、国民に利益をもたらすような住宅や医療の充実、農業・加工食品産業や観光関連サービス業の促進、中小企業の振興が挙げられている。

(注)大統領の名前について、今後は「エルシーシ」と表記する。

(常味高志)

(エジプト)

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