実写 版 ブラック ジャック

(トルコ、日本)

イスタンブール発

2018年02月22日

トルコ政府は2月17日付官報(30335号)で、日本からの農林水産物・食品の輸入に際して実施していた放射性物質に関する全ロット検査の撤廃を発表した。これにより、通関時のリスク低減と通関時間の短縮が期待される。

地域・品目の限定なく放射性物質検査が不要に

政府は2018年2月17日付官報(30335号)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(トルコ語)において、日本からの農林水産物・食品に対する放射性物質の全ロット検査を撤廃すると発表した。この措置は2月17日付で即日発効となった。日本の外務省外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます農林水産省外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますからも公表があった。

東日本大震災(2011年3月)の影響により、トルコ政府は放射性物質に関する全ロット検査の実施を定め、例年12月末に1年間の措置延長を発表してきた(2017年12月30日付官報)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。日本から輸入される農林水産物・食品については、商品到着後にトルコ側で全ロット検査が行われ、万が一、放射性物質が検出された場合には商品廃棄または返送扱いになるとされた。

そのため、多くの食品インポーターは日本企業に対して、商品に放射性物質が含まれていないことを保証するよう求めたが、日本企業にとっては出荷時ではなく、商品到着後のトルコ側検査機関による検査結果まで保証することは難しく、双方にとって放射性物質検査がリスクとなっていた。今回の措置により、地域・品目を限定することなく放射性物質検査が不要となったことから、この問題については原則的に解決したものとみられる。

生鮮野菜・果実などの輸出検討が可能に

これまでは放射性物質検査の結果が分かるまで通関できず、輸出品が留め置かれることもあり、生鮮(未加工)の野菜・果物などの輸入は事実上困難といわれてきた(農林水産省ウェブサイトPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)参照)。実際に筆者が把握する輸出事例でも、通関に3週間程度を要しており、鮮度の保持や迅速な輸送が重要となる生鮮品についてはビジネス検討が難しい状況だった。しかし、今回の全ロット検査撤廃により、検査結果を待つ必要がなくなることから通関時間の短縮が期待され、植物検疫などの個別要件を満たせば、生鮮・未加工の野菜・果物などの輸出についても検討が可能になるとみられる。

現地インポーターへの認識の浸透が重要

これまでは、日本企業がトルコへの食品輸出を検討する際、トルコ政府の求める「輸出国政府が発行する、当該食品などが人体に影響を与えない旨の証明書(例:英文の衛生証明書)」の入手が課題だった(注)。この問題は、2014年にトルコ政府が厚生労働省地方厚生局の発行する自由販売証明書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを当該証明書として認めたことから解決したかに思われたが、現地インポーターの中で認識が十分に浸透していない。ジェトロも情報発信を続けているものの、「日本からの輸入は衛生証明書が入手できないことから、事実上は困難」という先入観を払拭(ふっしょく)し切れなかった。

今回の措置についても、いまだにインポーターが「日本とのビジネスはリスクが大きい」との先入観を持っているため、当初はスムーズにいかない可能性がある。このため、根拠資料を示して、規制の撤廃を現地インポーターにも知らせていく必要がある。

(注)日本の各保健所の発行する英文の衛生証明書が輸出に活用されてきたが、同書類の発行可否が各自治体により異なることから、トルコ側インポーターから引き合いがあっても、必要書類を準備できない場合があった。

(中村誠)

(トルコ、日本)

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