ブラック ジャック サイト
(欧州、ハンガリー、フランス、日本)
欧州ロシアCIS課
2018年01月22日
電子事業とセラミック事業を主力とするイビデン(岐阜県大垣市)は、欧州ではフランスとハンガリーの工場で自動車排気系部品DPFを製造している。これらの工場立ち上げや立ち上げ後の操業体制構築に携わった経営企画部長の廣瀬康人氏に、同社の欧州事業拡大の経緯と今後の展望について聞いた(2017年12月22日)。
欧州の2工場でDPFを製造
イビデンの欧州での売上高は、全体の23%(2016年度)を占める。同社の主力事業の1つがセラミック事業で、欧州にある3つの工場のうち2工場(フランスとハンガリー)で自動車排気系部品DPF(ディーゼル車黒煙除去フィルター)を製造している。DPFは同社の売上高全体の20%程度を占める主力製品で、同社では熱伝導性や強度、耐熱性に優れる炭化ケイ素(SiC)を生かし、高い熱応力とさまざまな形状への対応を可能にした。EUの自動車排ガス規制(現在はユーロ6)に対応するため、窒素酸化物(NOx)の濃度を下げると、すすが出る。このすすをフィルターで除去するのがDPFの用途だ。新車のディーゼル車への装着が普及し、大きなヒットとなった。主原料であるSiCは製造工程で電力を大量に使用するため、欧州工場で使用する分は欧州域内の国々から調達している。
欧州初の工場は、フランスのロアレ県に2001年に設立した。DPFのブラック ジャック サイト初生産がフランスだった。フランスを選択した理由について、廣瀬部長は「取引があったフランスの大手自動車メーカーからのお誘いの部分が大きいが、顧客への近さに加え、フランスでは原子力発電により(当時)電気代が日本の3分の1程度と安いことも魅力だった」と語った。
親日的でセラミック文化を持つハンガリー
欧州におけるDPFの第2の量産拠点として、EU加盟直後のハンガリー・ブダペスト近郊に2004年6月に工場を設立した。ハンガリーではDPFに加え、触媒担体保持・シール材(AFP)を製造する。ハンガリーを選択したのは、主要顧客が所在するドイツへの輸送の便に加え、ハンガリー政府のインセンティブの要因が大きかったという。廣瀬部長は「近隣国のポーランドやチェコなどと比較しても、ハンガリー政府のインセンティブの内容は魅力的だった。税制面での優遇措置に加え、当社の工場に欠かせない特別高圧電源や、上下水道の敷設も政府(投資庁)および工業団地が支援してくれた」と話す。現在では当時と比べインセンティブは減ったが、「単なる生産能力拡大ではなく、それに加えて先進的な技術導入や研究開発(R&D)投資を行うと、今でもインセンティブが付く。ハンガリーが目指す方向性がよく分かる内容だ」と語る。
ハンガリー人は、同社との親和性も高かったという。廣瀬部長は「ハンガリーでは地場産業として陶磁器が根付いており、当社の扱うセラミック分野について詳しい人材が豊富だった。親日的なところも評価する」と話す。しかし、英語が話せる優秀な人材の雇用には苦労したという。
EU統計局(ユーロスタット)によると、ハンガリーの失業率は2017年9月時点で4.1%まで下がっている。雇用市場の逼迫に伴い、同社のハンガリー工場ではウクライナ人を多く雇っているという。夏場に必要な定員を大きく割り込む時期もあったが、派遣会社を通じてウクライナ人を採用することで、現在は必要な定員を確保しているという。
電動化対応とともに内燃機関の省力化に取り組む
欧州では英国やフランスが2040年以降のガソリン車・ディーゼル車の販売禁止を発表しており、電気自動車(EV)の普及が進むとみられる。EV化の流れについて廣瀬氏は、内燃機関はすぐにはなくならないだろうとし、「電動化への対応と内燃機関の省力化の両にらみでやっていくことになる」と述べ、「バス、トラック、建機、農機など電動化が乗用車ほどは進まないカテゴリーにも活路を見いだしていく。ガソリン車向け製品の研究開発も進めている」と続けた。
2017年12月に最終合意した日EU・EPAについては、関税の削減・撤廃に加え、通関が速くなることを期待するという。2011年に発効したEU韓国自由貿易協定(FTA)を既に活用しており、日EU・EPAの活用も検討するとした。
(田中晋、深谷薫)
(欧州、ハンガリー、フランス、日本)
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