輸入者に厳しい条件を課し、ハイパーブラックジャック
(ベトナム)
ハノイ発
2018年01月17日
ベトナム政府は、自動車の生産・組み立て、輸入および保証・保守サービス事業に関する条件を定める政令116号(116/2017/ND-CP)と、輸入関税率の優遇などを定めた政令125号(125/2017/ND-CP)を相次いで公布した。政令116号では、順守が実質的に困難な条件が記載されている。また、政令125号では、ハイパーブラックジャックいては、一定の条件を満たすことで関税が免除されるなどとなっているものの、内容に不明確な部分があり、現地企業からは困惑の声が聞かれる。
完成車輸入に他国政府が発行する認可証取得を義務付け
政令116号(2017年10月17日公布・施行)によると、当地で自動車の生産・組み立て、輸入を行う企業は、車両の保証を行うことと保守サービス施設を持つことなどが条件とされ、消費者保護が図られる一方で、企業に対して厳しい内容になっている。
特に、完成車を輸入する場合、輸入者は「検査時に他国政府が発行する認可証を提出すること」や「輸入ロット(1船)ごと・車両仕様別に交通運輸省登録局(VR)による排気量および安全性能検査を行うこと」が義務付けられている(6条2項)。しかし前者については車両認可証が各国国内で使用する車両に対して発行されるもので、輸出車を対象としたものではない。また後者を実施する場合、輸入者は1回につき2カ月程度のリードタイムと1万ドル程度の多大な負担が発生するとされる。
このほか、現地生産メーカーに対しては、製造した車両のテストを行うために全長800メートル以上のテストコースを所有もしくは賃貸することが義務付けられた(政令116号付属書I)。本規定は18カ月間の猶予が認められている(31条1項)ものの、実態として本条件を満たす現地生産メーカーはほとんどなく、新たな土地の確保が必要となり、費用や立地などを考慮すると実現が極めて困難な条件となっている。
2018年の関税撤廃を控え、自動車市場が未成熟なベトナムでは、日系を含む自動車メーカーが現地生産車種を絞り、完成車の輸入に切り替える動きがみられた。政令の施行により、完成車輸入が実質的に不可能になる可能性が高いことから、当地自動車業界団体は政府に対して、政令内容の見直しを再三にわたり求めている。なお、一部の政府幹部は産業界の主張に理解を示しているとされることから、今後の動向を注視する必要がある。
免税対象となる部品はいまだ不明確
輸入関税率の優遇などを定めた政令125号は2017年11月16日に公布され、2018年1月から、ハイパーブラックジャックいては、輸入関税が免除となった。免税対象は、当地においてノックダウン方式で製造される下記車両のうち、品目リストに記載されている自動車に使用される部品としている。
- 乗用車(エンジン排気量2500cc以下で9人乗り以下)
- トラック類(HSコード87.04および87.05)
- ミニバス(10~19席)
- バス(20席以上)
免税の条件としては、自動車メーカーは半年ごとの最低総生産台数と指定された車種の最低生産台数を満たさなければならない(表参照)。また、生産された車両は欧州排ガス基準「ユーロ4」(2018年から2021年までの期間)および「ユーロ5」(2022年以降)を満たす必要があるほか、乗用車については燃費を100キロにつき7.5リットル未満としなければならない。
車種 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | ||||
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施行日~ 6月30日 | 7月1日~12月31日 | 1月1日~ 6月30日 | 7月1日~12月31日 | 1月1日~ 6月30日 | 7月1日~12月31日 | ||
乗用車 | 最低総生産台数 | 8,000 | 8,000 | 8,500 | 8,500 | 10,000 | 10,000 |
1モデルの最低生産台数 | 3,000 | 3,000 | 3,500 | 3,500 | 4,000 | 4,000 | |
トラック (5トン未満) |
最低総生産台数 | 3,500 | 3,500 | 4,000 | 4,000 | 4,500 | 4,500 |
2モデルの最低生産台数 | 2,000 | 2,000 | 2,500 | 2,500 | 3,000 | 3,000 | |
トラック (5トン以上) |
最低総生産台数 | 2,500 | 2,500 | 3,000 | 3,000 | 3,500 | 3,500 |
2モデルの最低生産台数 | 1,000 | 1,000 | 1,200 | 1,200 | 1,400 | 1,400 | |
ミニバス | 最低総生産台数 | 400 | 400 | 450 | 450 | 500 | 500 |
1モデルの最低生産台数 | 150 | 150 | 200 | 200 | 250 | 250 | |
バス | 最低総生産台数 | 800 | 800 | 850 | 850 | 1,000 | 1,000 |
1モデルの最低生産台数 | 450 | 450 | 500 | 500 | 600 | 600 |
(注)政令では2022年まで生産台数が定められている。
(出所)2017年11月16日付政令125/2017/ND-CP
当地の日系自動車業界関係者は、最低総生産台数を満たすメーカーは数社に限られるとし、「政府は国内生産台数を増加させるため、メーカー各社の生産増を促す思惑があるのではないか」と推測する。また、「免税対象の部品がASEAN域内から安く輸入できるようになるため、該当部品の国内製造は促されず、本政令が目的とする裾野産業発展の足かせになる可能性がある」と指摘する。
政令125号は2018年1月1日に施行されたが、現地生産ができない部品のリストや基準などが不明確で、具体的にどの部品が免税対象とされるかは不明だ。当地自動車部品メーカーにとっては、自社部品が現地で生産できない部品として取り扱われると、当地での生産計画に影響があるだけに、業界関係者は規定の運用状況に注目している。
(杉浦弘展)
(ベトナム)
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