NAFTA再交渉次第では国産品が不利になる展開も-中南米のeコマース事情(3)-

(メキシコ)

メキシコ発

2017年10月13日

メキシコの電子商取引(EC:eコマース)の市場規模は年々増加傾向にあるものの、決済や郵便事情の悪さなどで世界のECランキングとしては中堅に位置する。課題としては店主と運営側とのトラブルが生じ始めており、ルール確立が待たれるほか、北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉の結果次第では、既存の流通業との対立が起こる可能性も懸念される。メキシコ編の最終回。

市場規模急拡大も発展の余地あり

メキシコインターネット協会(AMIPCI)によると、2015年のメキシコにおけるECの市場規模は2,570億9,000万ペソ(約1兆5,940億円、1ペソ=約6.2円)で、前年比59%増、2012年当時と比べると3倍の規模に成長している。

また、ECのユーザー属性に関しては、22~34歳のユーザーが約4割を占めているのが特徴だ。

〇男女比:男性54%、女性46%

〇年齢層:18~21歳12%、22~34歳39%、35~44歳24%、45~54歳14%、55歳以上11%

〇学歴:博士1%、修士10%、学士52%、大卒(単位取得済み)11%、高卒10%

EC市場は急成長中ではあるが、国連貿易開発会議(UNCTAD)による「BtoC eコマース指数ランキング2016年」によると、対象137カ国中、メキシコは63位で、2年前の60位よりも3つ落としている。なお、ランキング上位国は、1位ルクセンブルク、2位アイスランド、3位ノルウェー、4位カナダ、5位日本、6位フィンランド、7位韓国。

ランキングでは、メキシコはインターネットユーザー数の割に、ECでの買い物が少ないとされ、これについて「中南米・カリブ地域ではクレジットカードの保有や使用率が低く、また郵便サービスの質が悪い(信用性を欠く)ことなどが原因」と指摘されている。

アマゾンでは、コストは安くても国際郵便での配送を推奨はしておらず、国際宅配便を使うよう勧めている。ユーザーは代金決済の安全性に懸念を抱いており、決済手段としては、店側に個人実写 版 ブラック ジャックを伝える必要のないペイパル(PayPal)を用いている割合が最も高いこともこれを裏付ける(3大ECオンライン カジノ ブラック)。

店主と運営側の間でトラブル発生

アルゼンチンのメルカドリブレは、ユーザー拡大へのプロモーションに力を入れる。販売部長のオマル・ガルシア氏によると、メキシコの登録ユーザーは現在2,500万人で、1日当たりの訪問者数は500万人。登録ユーザー数に比べて、実際の購買行動につながっている割合が低いと感じており、対策が必要と考えている。例えばポイント制度を導入して、一定のポイントを超えると送料を無料にするインセンティブを設ける。ほかにも、主要なユーザー層であるミレニアル世代(2000年以降に成人、あるいは社会人になる世代)に向けた広告強化やファッション製品のプロモーションを行っている。マーケットプレイス内の複数のブランドの寸法表を掲示したり、また3日以内に交換・返品に対応する柔軟なロジスティクス網を導入したりしている(「エル・フィナンシエロ」紙8月1日)。

一方で、消費者の便益に集中し過ぎて、店主と運営側とのトラブルも幾つかある。一例はクーリングオフをめぐるもので、連邦消費者保護法ではクーリングオフ期間を5日間と定めているものの、同期間を過ぎた返品対応をメルカドリブレ側が何の予告もせずに行い、返金処理もしていたとして、店主側が連邦消費者検察庁(PROFECO)に訴え、同庁がマーケットプレイス運営側に罰金を科した。また、アマゾンでは、メキシコでのトラブルであっても、調停プロセスは米国ワシントン州シアトルで行う旨を規定するなど、調停のハードルを上げている(「エル・エコノミスタ」紙3月28日)。

既存の流通産業に脅威となる可能性

また、NAFTAの再交渉で電子商取引の章立てが行われた場合、メキシコ側が懸念している事項もある。米国通商代表部(USTR)は交渉方針の1つとして、クーリエサービスによる関税(IGI)と輸入消費税の非課税限度額を、現状の1通関当たり50ドルから800ドルに引き上げるよう求めている。当地で輸入ディストリビューションを行っている企業は商業貨物を通関させる時に関税と消費税を払って通関し、それを小売業に卸している一方で、例えばアマゾンの米国マーケットプレイスで購入した製品の場合、個人消費としてメキシコにクーリエで配送され、非課税範囲内であれば関税と消費税を支払わずにユーザーに届く。その限度額が800ドルに引き上がるため、基本的にはECに有利(マーケットプレイス出店者や消費者に有利)になる提案だ。

メキシコのネット購入ではアパレル関係が多く、当地のアパレル産業にとって脅威となる可能性がある。メキシコ産のアパレルをネット購入した場合には、800ドル以下でも付加価値税(IVA)を支払う必要があるため、競争上、国産品が不利になるからだ。このため、メキシコ政府としては同意できないとしているが(「エクスパンシオン」誌電子版8月7日)、交渉の先行きは不透明だ。

(中島伸浩)

(メキシコ)

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