アリババの参画で越境EC市場が活発に

(マレーシア)

クアラルンプール発

2017年08月10日

中国の電子商取引(EC)大手アリババ集団がデータセンター開設を7月20日に発表するなど、マレーシアの越境EC関連市場の動きが活発化している。日本の商品では美容・健康関連に人気があるが、価格やサポート体制が課題とされる。

国際物流拠点とデータセンター開設へ

マレーシア政府はEC市場の育成に力を入れている。中でも目を引くのが中国のアリババ集団との関係強化だ。アリババはジャック・マー(馬雲)会長が2016年11月、マレーシア政府のデジタル経済アドバイザーに就任、2017年3月にはマレーシアでの国際物流拠点の設立を発表したほか、7月20日には子会社とマレーシア政府が共同で立ち上げる「世界電子貿易プラットフォーム(eWTP)」のデータ処理を手掛けるデータセンター開設計画を明らかにした。

政府の試算ではマレーシアのBtoC市場の売上高は2014年時点で15億ドルとされ、IMF統計を基にすると1人当たりでは49ドルにとどまっている。明確な統計はないが、越境EC市場(注1)はさらに小さいとみられ、発展はこれからといえそうだ。マレーシアの主な越境ECプラットフォームとしては、韓国系の11ストリート、マレーシア地場のレローン(Lelong)やイオン・マレーシアが管理するShoppuなどがあるが、数は少ない。EC最大手アマゾンは進出していない。

日本の商品では美容・健康に人気

11ストリートが国内の3,507人(16~35歳、男性45%、女性55%)を対象に2016年11月に実施したアンケート調査外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、オンラインショッピングを利用したことがある人は83%、1年以内に再び利用する予定がある人も85%に上るなど、近年は少額な買い物を中心にECの利用が進んでいるようだ(表参照)。また、同アンケートによると、人気のカテゴリーはファッション&美容、電子機器、スポーツ&ホビーで、今後は室内装飾&家具、家庭用品&雑貨、サプリメントの人気が高まるとのことだ。

表 21 トランプ消費者のECへの関心度

日本からの商品についても、美容・健康関連の人気が目立つ。11ストリートは、数は少ないが日本の商品を扱っており、2016年の人気商品はマウスウォッシュだった。ヘアマスクなども数点扱っており、同社は日本のファッション&美容商品、電子機器などの品ぞろえが増えることを期待している。また、Shoppuにおいても、日本の商品としてはフェースパックや美容オイルなどの売れ行きが好調だという。

価格やサポート体制が課題

11ストリートとレローンによると、越境ECにおける最大の課題は物流で、輸送費がかかる分、商品の価格競争力が低下することだという。出店企業にとっても、マレーシアの消費者は品質以上に価格を重視する傾向が強く、価格設定は売れ行きを大きく左右しかねない。さらに日本からの出店の場合は、カスタマーサポートの問題もある。出店者側にサポート対応を任せているECプラットフォームの場合は、出店企業の担当者に相応の語学力が求められるという。

ECの決済(注2)では、11ストリートは日本の銀行に振り込む方式で、出店企業は外貨両替の手数料を負わない。また、同社は商品を追跡し、買い手が受け取ったかをチェックし、料金が支払われない、商品が届く前に支払いを済ませるといったことが起きないようにしている。また決済自体も、マレーシアで1万社以上の企業が導入しているipay88という決済サービスを利用し、セキュリティーを担保しているそうだ。

(注1)ここでの越境ECの定義は、現地の銀行口座、法人登記の必要がなく、国外マーケットへ出店可能なECサービスをいう。

(注2)マレーシアでの決済手段について、前述した11ストリートのアンケート調査ではオンライン送金が54%で最多。以下、クレジットカードやデビットカードが33%で続き、代金引き換えが12%、指定口座への前払いが1%だった。

(新田浩之)

(マレーシア)

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