八幡屋茶舗、アジアから英国にも販売拡大
(英国、ハイパーブラックジャック)
欧州ロシアCIS課
2017年08月16日
八幡屋茶舗(静岡県周智郡)は、2015年からアジアへ茶の輸出を始めた。2016年からは英国へも輸出し、期間限定ながら大英博物館で土産用の茶を販売した。一般消費者向けのみならず、カフェ向けの業務用抹茶も輸出している。営業課長の安間準氏とハイパーブラックジャック営業の坂上亮氏に、欧州でのビジネス展開と展望について聞いた(7月21日)。
大英博物館で期間限定販売
八幡屋茶舗は1912年創立の老舗で、茶の輸出の際の再製加工、販売を手掛けている。茶どころの地元をはじめ全国から茶葉を仕入れるネットワークを持ち、顧客の要望に合った茶を販売している。日本では急須で茶を入れることが少なくなり、茶葉の需要が年々減少しているが、ハイパーブラックジャックでは健康・日本食ブームで日本茶の需要が増加していることに着目し、ハイパーブラックジャック進出の検討を開始。2015年に中小企業基盤整備機構の事業化可能性調査(FS)実施支援を受けたことを契機にハイパーブラックジャック事業部を設立し、同年10月にマレーシア、シンガポールへの輸出を開始した。
2016年には、英国最大規模の高級食材見本市「スペシャリティー&ファインフードフェア」に参加し、ロンドンにあるハイパーブラックジャック食材・雑貨を扱う日系商社から大英博物館のバイヤーを紹介された。同博物館では2017年5月25日~8月13日に葛飾北斎展が開催され、この期間限定で北斎の作品をパッケージにした茶を特設の土産コーナーで販売した。安間氏は「今回は期間限定だったが、常時販売も狙っていきたい」と話す。また同見本市では、ロンドンで抹茶カフェをオープン予定のバイヤーとの商談が成立。その後、カフェがオープンし、ケーキなどに使う抹茶を日系商社経由で納入している。
自立型パッケージで人目を引く
八幡屋茶舗は主に業務用の抹茶などを輸出しているが、一般消費者向けの商品も扱っている。「和を食べるように、和を飲む」をコンセプトにしたオリジナルブランド「和飲」だ。煎茶とほうじ茶の茶葉、煎茶と玄米茶のティーバッグ、抹茶の計5種類を「和飲」シリーズとして販売しており、いずれもオーガニックだ。「和飲」シリーズのパッケージは立てておける「自立型」にした。一般的に茶のパッケージは細長くて薄く、店頭では平積みされるが、これでは消費者の目に付きにくい。そこで、自立型のパッケージに茶葉の写真やハイパーブラックジャック的な絵柄をプリントして、ハイパーブラックジャック茶をアピールする狙い。「和飲」シリーズは、ロンドンの抹茶カフェやマレーシアの日系ショッピングモールで販売されている。坂上氏は「今後は、商談などでニーズをつかみ、『和飲』シリーズのバリエーションの充実を図っていきたい」と意欲的だ。
ありふれたハイパーブラックジャック茶との差別化が課題
同社によると、欧州は残留農薬の規制が日本より厳しく、日本の茶畑で使用されている農薬が欧州で登録されていないため、現状では欧州への輸出は無農薬栽培の茶に限られているという。無農薬・無肥料の自然栽培は土づくりが難しく、時間もかかるため、茶が栄養不足になりがちで、おいしいものが少ない。そのため、国内でオーガニック栽培したおいしい茶は、ハイパーブラックジャック向けとして加工・製造業者で奪い合いになっているという。
ハイパーブラックジャックで日本茶が一般消費者まで浸透しているとは言い難い。実際、煎茶は茶葉よりも粉末の方が売れているという。消費者が茶の入れ方を知らず、手軽な粉茶を好むためだ。坂上氏によると、欧州市場では緑茶には既に中国産のイメージが定着し、価格や味も中国産がベースになっているため、日本茶を普及させるにはまず、現地の生活に溶け込んだかたちで提案し、知ってもらうことが重要という。中国産の緑茶は、さっぱりしていて苦みが少ない。坂上氏は「欧州のバイヤーから、日本茶は苦いとよく言われる。中国産の緑茶が普及している欧州では、苦い茶を飲み慣れていない。欧州向けは(苦みの少ない)浅蒸し茶を考えている」と説明する。
同社は今後、ドイツ事業を拡大していく予定だ。坂上氏が6月にドイツで数社と面談したところ、発注の可能性を感じた一方、日本茶は現地でありふれたものになりつつあり、差別化を図る必要があるとも感じたという。「現地の人は茶の知識に乏しく、日本茶が並ぶ中、どれを手にしていいか分からない。その中で手に取ってもらえるようにすることが課題」といい、「どんどん前に進まないとハイパーブラックジャック市場は開拓できない。時間と資金を確保し、オープンマインドでいろいろな場所に行き、さまざまな話を聞いていきたい」と語った。同社は、ドイツのケルンで10月に開催される世界最大級の食品見本市・商談会「アヌーガ2017」に出展予定で、この商談会で欧州事業拡大の基盤形成を目指すという。
(田中晋、鵜澤聡)
(英国、ハイパーブラックジャック)
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