アイリスUSA、eコマースの波に乗って事業拡大
(米国)
ロサンゼルス発
2017年07月20日
アイリスUSAは「見える収納ケース」のヒットに加えて、eコマース(電子商取引)の活用で大きく飛躍している。2016年に新工場をアリゾナ州に設置し、2017年末までの予定でウィスコンシン州からの本社機能の移転を進めている。その活動状況とアリゾナでのビジネスの魅力について、同社の国際マーケティングマネジャーの豊原賢治氏と永澤崇氏に聞いた(5月19日)。
現地のニーズを捉えた積極的な商品企画
アイリスオーヤマ(本社:宮城県仙台市)の米国法人であるアイリスUSAは、ウィスコンシン州とテキサス州に加え、2016年5月に米国3ヵ所目の新拠点をアリゾナ州フェニックス市郊外に設立した。3拠点の従業員総数はオフィスと工場を合わせ約480人。工場は自動化が進んでおり、最小限の人員でオペレーションを行う。大型小売店のコストコ、ウォルマート、コンテナストアなどを取引先としており、必要な量に対応するため、24時間の操業体制を組んでいる。
アイリスUSAは、過去20年にわたって「見える収納ケース」を米国で販売してきた。日本では一般的な中身が透けて見える収納ケースは、米国に存在しなかったコンセプトで、これがヒット商品となり売り上げを伸ばしてきた。ただし、全ての商品が売れるほど甘くはなく、豊原氏は「米国のニーズを踏まえた商品の企画やコンセプトづくりは米国と日本との双方で行っている」と話す。日本ではあまり見掛けないクリスマスリース用の収納ケースやギフト用ラッピング用紙の収納ケースなど、米国の生活に根差した商品の企画や、機能性、サイズ、価格で顧客のニーズをしっかり捉えている。「価格でも質でも付加価値のある商品を提供していくことをモットーとしている。日本本社も米国での商品開発を積極的に後押ししてくれる」と同氏は述べる。
eコマースの活用が販売拡大の追い風に
米国ではeコマース、特にアマゾンの成長が目覚ましく、これらの活用が米国での販路拡大の追い風となっている。アイリスUSAはeコマースによる販売を2008年ごろから開始しており、現在は自社ウェブサイトのほかアマゾンなどで商品を販売している。永澤氏は「eコマースが好調だとしても、売り手からするとオンラインでの販売は商品の発送が個別に発生する場合も多く、実店舗向けにまとめて発送する方がコストを抑えられるものもある」と話す。eコマースの活用は、商品によっては発送の手間や店舗発送と比較してコストが割高になる場合があり、注意が必要だという。
魅力が大きい新拠点アリゾナ州
アリゾナ州への移転理由としては、「既存取引先の流通センターに近いことや、アジアからロサンゼルス港に貨物が入ることから、外国貿易地域(FTZ、注)を活用する上での恩恵が大きいことなどが挙げられる。ビジネス環境が整っていることはもちろんだが、実際に移転してみてもその利点は大きかった」と豊原氏は語る。日本との時差がウィスコンシン州と比べて短いことから、駐在員や管理職が日中に日本とやり取りできるなど業務に大きく寄与する。加えて、土地や道が広い、物価が西海岸や東海岸ほど高くないことなども魅力として挙げられる。
また雇用面でも、「ウィスコンシン州では人材の確保に苦労したが、アリゾナ州では質の高い人材がそろう」と豊原氏は述べる。米国の従業員は、仕事に対する考え方や価値観が日本人とは異なる点も多い。「報告・連絡・相談が重要だということを理解してもらう必要があり、仕事を押し付けるとやる気をなくすことがあるので、適度にほめることも大事だ」という。また、永澤氏は「雇用がある程度、流動的なことは仕方がない。本当に質の高い、経験のある人材を確保するには、ほかに負けない給与などの条件で競争力を付けていくことが重要だ」と語る。
米国市場での成功を基に、同社は米国でも欧州でも売れるグローバル商品を開発していくことを目指している。
(注)FTZに搬入された商品、貨物は無期限の蔵置が認められるほか、FTZから国外に再輸出された場合には通関手続きと関税支払いが免除される。他方、米国市場での販売を目的にFTZから米国内に持ち込む場合、通関手続きおよび関税の支払いが必要となる。ただし、FTZに持ち込んだ原材料や部品にかかる関税、またはこれら原材料や部品を用いてFTZ内で生産した完成品にかかる関税のどちらかを選択して支払うことが一般的に可能だ。
(サチエ・ヴァメーレン)
(米国)
ビジネス短信 feb43528dfc07b25