ブラック ジャック ストラテジー反応-

(イタリア、EU、日本)

ミラノ発

2017年07月14日

日EU経済連携協定(EPA)の大枠合意について、イタリアでは全般的に好意的に受け止められており、特に農業関係者からは歓迎の声が大きい。他方、同EPAは多国籍大企業のみを利するとみるNGOなどからの反発の可能性や、ISDS(投資家対国家の紛争解決)をめぐる日EU間の議論の歩み寄りには時間がかかることが指摘されている。

経済開発副大臣も高い期待感示す

イバン・スカルファロット経済開発副大臣は7月6日に自身のウェブサイトで、「今回の合意によってイタリア経済は大きな恩恵を受ける」「保護貿易を排し、自由貿易を推進することは経済成長の上で欠かせない」「世界で最も重要な市場の1つにわれわれの製品・サービスが入り込む余地が生まれる」との期待感を示した。また、ロレンツォ・モリーニ駐日イタリア公使参事官は、7月6日に東京で開催されたファッション展示会「モーダ・イタリア」において、「EPAが自由貿易を加速する」と表明した(「イルソーレ24オーレ」紙7月6日)。

農業分野からは、特に歓迎の声が大きかった。農業関連業界団体の調整組織であるアグリインシエーメのジョルジョ・メルクーリ代表は7月6日、「EPA大枠合意はEUおよびイタリアの農業従事者にとって朗報だ」とした。「日本の消費者はこれまでもイタリア産品に高い関心を示してきており、質を重視し、常にニッチな製品を追い求める豊かな市場だ」として、日本の消費市場へのさらなる参入への大きな期待感を表した。また、「地理的表示(GI)の保護が合意されたことも重要だ」としている。イタリアワイン組合のアントニオ・ラッロ理事長も同日、「EPAを歓迎する。内容に満足している。日本はイタリアワインにとっての戦略的市場だ」と述べた。

工業関連団体も歓迎、メディアは多角的に分析

工業分野の企業が多く加盟するイタリア産業総連盟(Cofindustria)のリサ・フェラリーニ副会長(欧州担当)は「4年間にわたる交渉の末の今回の大枠合意を歓迎する。交渉が全て終了したわけではないが、障壁を取り除く日本政府の取り組みにより、欧州側に満足のいく結果となった。最終合意も遠くなく、EPAで目指すもののレベルは高い」と期待感を表明した(農業専門ニュース「アグロノティツィエ」7月11日)。

また、ミラノ・カトリック大学政治学部のマクロ・フォルティス教授は「EPAはイタリアにとって食品・ファッションの分野だけではなく、電子機器や工業製品などについても対日輸出の追い風となる」と分析している(オンラインニュース「Affaritaliani.it」7月11日)。

メディアの反応はさまざまに分かれている。経済紙「イルソーレ24オーレ」は全般的にEPAを好意的に取り上げ、前述の有識者の見解のほか、公共サービスの入札や投資機会の拡大についても言及している。一方、テレビ番組などでは、欧州やイタリア側の公共サービスへの日本の参入について、EUやイタリアの基準が順守されるのかという観点からの懸念も紹介されていた。また、「イル・ファット・クオティディアーノ」紙(7月6日)は、EPAは多国籍大企業のみを利するものだとするNGOなどが今後反発する可能性があることや、ISDSをめぐる日EU間の議論の歩み寄りには時間がかかることを指摘している。

(山内正史)

(イタリア、EU、日本)

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